飯能・天覧山 ロープワーク講習会
 【期日】2010年12月23日(木)
 【メンバー】L:T/M、M/S、I/S、Y/S、K/Y、T/O、S/W、K/W、M/U、T/K、S/K
 【コースタイム】 西武鉄道・飯能駅7:30→飯能市民会館前駐車場8:00→天覧山岩場(訓練)8:15〜12:00→
          →天覧山山頂(昼食)12:05〜13:00→天覧山岩場(訓練)13:05〜15:30→
          →飯能市民会館前駐車場15:40→西武鉄道・飯能駅16:00頃
 【山行内容】
 今日の講習会は、T/Mさんと、M/Sさんに講師をして頂き、参加者は講師2名を含め計11人でした。
 
 訓練内容は12月12日と同様で下記の通りです。
≪訓練-1≫ ロープに中間結び目を作り、急斜面の下山時に、この結び目につかまり下りる訓練。(写真1)
≪訓練-2≫ 懸垂下降の途中でロープを固定し、横に移動する訓練。(写真2)
≪訓練-3≫ ロープを使ってケガ人を引き上げる方法。
≪訓練-4≫ 横にロープを張り、カラビナ2個でトラバース。(写真3)

 なお、講師T/Mさんより『中間結びが2ヶ所ほどけたケースがありました。結びの長さと最後の整形と締めを、お互いにきちんと確認しなければいけません』とのコメントを頂きました。

 この日は天気は良かったけど、北風が強かった。でも南斜面での訓練でしたので、さほど苦にはなりませんでした。昼食は風をよけて日向ぼっこ。(写真4)

 3月の訓練ではハーフマストでの確保を練習したが、このハーフマストの結び目は不思議だ。片方にはロープが動かせるが、その反対方向へはロックされ動かない。だからロープを引き寄せながら確保する場合は弱い力でも良い。しかし、ロープをたるませては絶対にダメだ。ロープがたるむと結び目が反転し、ロープの動き方も逆転する。すなわち、ロープが出て行くのに抵抗は少なく、引き寄せる事が出来なくなる。だから、結び目が反転しない様に少なくても片手は必ずロープを引いておく事が大切。(言いかえれば、ロープをほどかずに、少し緩めて、強く引けば、結び目が反転する。不思議だ)。『少ない力で確保できるので、岩登りは素人の小柄な女性に適している』とも考えられるが、ロープを握りそこねたら、その先にぶら下がっている命が無い。手先だけで確保出来ることが良い事か、肩がらみ・腰がらみの様に体全体を使う方が良いかは難しい。
 今日は懸垂下降の練習時に、念のため(本番では無いはずの)確保を肩がらみで行った。引張力がかかった時に絶対に止めるという覚悟が、確保者のふんばった右足に感じる。(写真5)
 
 ハーフマストの結び目は、ロープが出て行くのに抵抗が少ない方向でも、ロープに引張力がかかるとある程度の抵抗があるので、これを利用して懸垂下降をする。ハーフマストの結び目を下降器・エイト環の代わりのブレーキ装置に使うのだ。

 前回も懸垂下降は、腰ベルトのカラビナに、ロープをハーフマストで結び行った。前回、私は両手を使ってたるんだロープをハーフマストに結んだ。前回の練習では安全装置が二重にあり、足場も良かったので、岩壁の途中でもこの方法が可能だった。
 しかし、実際の登山中に「ロープ無しで下りられると思ったが、途中から思っていたより険しくなり登る事も下る事も出来なくなった時に、最後尾のリーダーが上からロープを垂らしてくれて『このロープで懸垂下降しろ』と指示された場合」であったなら、と想定すると、前回の様に簡単にはいかない。
 おそらく、まずロープにつかまり、自分の腹に巻いたテープスリングに付けたカラビナにこのロープを掛け、折り返して握り、『これで落ちる事は無い』と安心するだろう(最初からお腹にテープスリングを巻いておいて良かった。カラビナもリックザックを下さずに手の届く所に付けていて良かった・・・と思うだろう)
 ここから、ロープをカラビナにハーフマストで結ぶのだが、岩壁の途中で落ちない様にロープにつかまっている状態(全体重でぶらさがっている訳では無いが)だから、ロープには引張力がかかっていて、片手はロープを握っている状態で行うのだから、前回のやり方ではダメだ。

 講師のやり方は、
@カラビナの上側で折り返したロープ2本を左手で一緒に握る。(写真6)
A垂れ下がったロープを右手で逆手(小指が上側・親指が下側、ズボンの中にシャツを奥まで押し込む手つき)でつかみ持ち上げる(写真7)。ロープを持ち上げた時に、垂れ下がったロープは右手の甲の側に回っていなければならないが、普通にやれば自然にそうなる(写真8)。
B右手でつかんだロープを親指の腹でカラビナの開閉部に押し込む(写真9・10)。カラビナの開閉部にロープを押し込む時の向きも間違えてはいけないが、普通にやれば自然に正しい向きになる。
 もちろん、この手順では無く、指先で輪を作りカラビナに通しても同じ事ができるが、頭や指先で覚えた事は緊張する場面では間違いやすい。体全体の動作で覚えた事は忘れにくい。自転車の鍵の番号はすぐ忘れるが、自転車の乗り方は忘れない様に。
C右手を一旦はなし、垂れ下がったロープを引き上げ、ロープのたるみが全て無くなればハーフマストが完成する(写真11・12・13)。ただし、左手で握ったロープの折り返し分の遊びをスムーズに解消するのにチョットだけ難しい。ロープの引張力を一瞬ゆるめる事ができれば簡単だが、ロープの引張力を一瞬も緩められない場合は練習が必要かもしれない。6mmロープの場合は細くて握力がきかず、チョット心配だ。

 私の自己流を試してみた、
@カラビナの上側で折り返したロープ2本を左手で一緒に握るまでは同じだ。(写真6)
A折り返した側のロープ(下に続いている方)を強く引っ張りながら、ハーフマストの完成形になる様に、上に続くロープにU字型にからめ、カラビナの開閉部に通す(写真14〜18)。
Bハーフマストの結び目の完成形を覚えていれば、一番確実な方法と思うが、問題点がある。下に垂れ下がる側のロープが、上に続くロープに半周巻きついている。下側にロープを強引に引けばカラビナが反転して解決するようにも思える(写真19〜21)。しかし腰に巻いたテープスリングがねじれて強度が低下するとか、カラビナの開閉部が反対向きになる事が、何か不都合になるかもしれない。

 なお、オートロック安全環付カラビナは開閉部の開閉の手順が製品によっていろいろあるので、片手で操作するのには、良く練習しておく必要がありそうだ。安全環付カラビナは、ロープを自分に直接接続する一番重要なところに使うものだから、中間支点用に他人に貸す事はしないので、自分で自分の製品の使い方を知っていれば十分だ。
 
 参考に、ゆるんだロープに両手を使う事が出来る場合の、ハーフマストの結び目を作る方法を紹介します。
 まず、先輩に教えてもらった方法。バッタン方式と呼んでいる。
@ミッキーマウスの耳の様に輪を2個作る。この時2個の輪は必ず左右非対象形にする。写真22、写真23のどちらでもOK。
A写真24、写真25は2個の輪が左右対象形なのでダメだ。2個の輪をつなぐ横向きのロープと、それに交差する下へ続く縦向きのロープとの重なり方に注目。横向きロープがどちらも手前(上)、または奥(下)なら対象形だからダメ。どちらかが手前(上)でどちらかが奥(下)ならOK。左右で違っていればOKなのだが、あわてていると間違いやすい。私は最初にわざと左右対象の輪を2個作り、『これは間違っているのだから』と自分に言い聞かせ、片方の輪を反転させる。
B2個の輪を、開いて読んでいた本を閉じる様に『バッタン』と重ね合わせて(写真26)、その輪にカラビナを通せばハーフマストの結び目の完成(写真27〜29)。

 もうひとつの方法は、最初からハーフマストの完成形(写真26)を作り、ロープが二重になっている側をカラビナの開閉部に通せば完成(写真27〜29)。ハーフマストの完成形(写真26)をしっかり覚えておけば、一番手っ取り早い。

 実際にはケースバイケースだろうが、左手でロープにつかまっていても、完全にぶらさがっている訳でなければ、左手が全く使えないわけでも無い。ロープにつかまりながら、結び目を作る為に輪をひとつ保持する為に指を1・2本使う事もできるかもしれない。(オートバイでスロットルを回しながらブレーキをかける様に・・・例えがわかり難いか?)。私は、通勤電車の中で、捨てロープ用に買った6mm3mとカラビナ1個で練習したが、実際に近い状態でやらないと難しい。ベランダの物干し竿に結んで練習すると良いかも知れない(自殺の準備と間違えられない様に注意)
 いざという時に、確実にスムーズに出来る様に、少なくてもいずれか一つの方法をしっかりと覚えておきたい。

 いよいよ懸垂下降を開始。
講師より、懸垂下降では、足は岩壁にほぼ直角にする。足で体重を支えるのでは無く、足は岩壁と体の間隔を保持する為だけ、足の裏で岩壁を押さえる感じ。完全にロープに体重を預けずに、足で体重の一部を支えようとすると、足の裏で岩壁をしっかりと押さえる事ができずに足が滑って不安定になる。体重は全てロープに預ける気持ちで、身体はほぼ水平になるくらい寝る様に後に倒す。と説明を受ける。
 腰に回した幅2cmのテープスリングに全体重をかけるのだから、ちょっと痛いが仕方が無い。緊急時の為の練習なのだから。
 懸垂下降を岩登りの素人が習う事を否定する意見もある。下手に習って、出来る気になって事故を起こす場合がある。懸垂下降の事故とは、死を意味する。ロープ一本にぶら下がるのだから、どこか一つでも間違いがあると落ちる。支点の固定、末端処理、制動(ブレーキ)のかけ方、下降途中で動けなくなる場合もあるそうだ。習う場合は、確実に出来る様にしっかり習得するべきで、練習では失敗する事を前提に確実な安全装置を用意する事は言うまでも無い。
 『あぶないから懸垂下降はやらない』というのもひとつの考え方だ。しかし、わずか数mの懸垂下降が出来れば、あとは安全に短時間で下山できるのに、懸垂下降を避け、多くの時間と体力を使い登り返して下山する事は別の危険をともなう事も考えられる。登山道でないルートを下る場合も同様だ。どちらが正解とは言えないだろう、あくまで登山は自己責任だ。自己責任とは、下山後にだれかに責任を取ってもらえる訳では無い、というだけではない。登山中のその場では誰も助けてくれない。自分で解決しなければならない。

 「懸垂下降は、以前、振られた事があって、怖い」と言っていた先輩も、がんばってスムーズに下りる。実は天覧山での訓練は熱心に皆勤賞。振られるのは斜めに下りているからで、怖がると少しでも傾斜のゆるい方、足場のある方に下りようとするからで、最初から一番傾斜のきつい方に下りて行けば振られようが無い。ロープに吊り下がった振り子になった気分で、ロープは絶対に切れないと信じて体重を預けるしか無い。ロープを信じなければ成立しない技術だからだ。
 「おれはいい」と言っていた大先輩も、「何の為に来たの」と厳しい女性陣の声で挑戦。見事にクリア。
 一番の注目は小柄なU先輩、右手がロープ下側を握り、腰の後に回して、カッコいい(写真30)。身体に半周巻き付ける事で制動を増す為かもしれないが、私には『この右手はロープを絶対に離しません、たとえ振られてもこの右手は絶対に出しません』という強い意志に見えた(私も次は真似しよう)。

 ロープワークは危険箇所の通過に大切だ、最低限の事は全会員が習得し、実践しなければいけないと強く感じた講習でした。先生方ありがとうございました。

【追伸@】2009年8月19日のミニミニ講座資料は大変勉強になりました。(貸し出し管理はS/Oさんです)
【追伸A】ロープワークの説明は、全て右利きでの場合です。
【追伸B】個人山行では、「各自、6mm20mの補助ロープを持参する」事をリーダー部が推奨してくれたので、私は個人山行で持参していた6mm40mを、安心して半分に切りました。みなさん、個人山行では6mm20mのロープを持参しましょう、ツエルトや非常食と同じですから。  写真:K/W、記:S/K
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