| 蒲田富士から涸沢岳西尾根 |
| 穂高連峰西面の岩壁を眺めながら縦走したかった |
| 【期日】 2014年8月4日(月曜日)〜8月6日(水曜日) 【メンバー】 CL=(YK)、TI (合計2名) 【コースタイム】 8月04日(火) 北朝霞06:57⇒07:20 府中本町07:23⇒07:36立川07:41⇒07:59高尾08:02⇒09:46甲府09:48⇒11:44 松本12:05⇒ ⇒13:25平湯13:40⇒14:25新穂高ロープウェー乗り場14:25→15:22穂高平避難小屋 8月05日(水) 穂高平避難小屋04:16→4:59白出沢出合→尾根取付5:23→9:37ハイマツ薮に→→10:08固定ロープ→ →10:31頂上尾根末端→10:34蒲田富士(2742)通過→10:49降下点→11:03西尾根を登る→12:36主稜線→ →12:36涸沢岳(310m3)→12:40P3110を巻く→12:53穂高岳山荘→14:42涸沢ヒュッテ 8月06日(木) 涸沢ヒュッテ06:03→07:12本谷橋07:20→08:17横尾8:50→9:45徳沢→11:32小梨平(入浴)12:12→ →12:24上高地12:40⇒13:45新島々14:05⇒14:30松本15:05⇒15:36上諏訪(足湯)15:54⇒小淵沢⇒ ⇒塩山18:29⇒19:44高尾19:45⇒20:10西国分寺⇒20:32北朝霞 |
| 【コメント】 |
| 8月04日(火) 夏台風11号、12号がノロノロと台湾や南大東島のあたりを北上しているが、松本や高山の天気に影響がで始めるのは7日になってからとの週間天気予報に励まされて自宅を出た。南から層積雲の列がゆっくりと頭上を流れ、蒸し暑い微風が体を包む。 甲府発松本行きの列車内でリーダーのYKさんと無事に落ち合うことができた。安心して早めの昼食弁当を摂る。車窓から見る甲府盆地から南アルプスにかけての空は厚い雲に覆われて少々不安になるが松本に近づくにつれ雲が薄くなる。 松本駅で下車、いつものようにバスターミナルから平湯行きのアルピコバスに乗る。平日なのに乗客は多い。天気予報ではそろそろ晴れるはずだが松本平から見上げる常念山脈は雲を被り、中の湯から小雨がバスを濡らして、前方のワイパーが動き続けて気持ちが悪い。アカンダナトンネルを抜けると雲の下に入ったせいか、フロントガラスのワイパーが動作停止と「最悪ではない」とひとまず安心した。平湯で濃飛バスに乗り換える。途中の温泉郷や新穂高ロープウェイに向かう人たちで座席が埋まった。車中でリーダーに話かけていた若い男性は「悪天候で槍ヶ岳登山ツアーが途中中止、こちらに回ってきた」と予想もしなかった不気味な情報を伝えてくれた。 終点の新穂高ロープウェイ・バス停で下車する。ロープウェイの建物を見て、「大雨の笠新道を登った時、抜戸岳の稜線で晴れ間が出たな」と思い出す。今日は右俣谷の林道へ向かう。舗装された林道脇広場には工事の重機が停まり、林道には一般車が入らないようにゲートが2か所も設けられていた。高木樹林帯の中の林道を進むにつれ、槍ヶ岳から下って来る人たちとすれ違う。濡れてはないものの雨具を着ている人達が多いので「やはり」と嫌な気がした。穂高平避難小屋への近道徒歩道に入った。登りの傾斜になるといつものようにYKさんに遅れるが迷うことのない1本道で急がず周りの植生や鳥の囀りを楽しみながらマイペースで進んだ。それにしても幾筋もの小沢を下る清水の流れが強い。濡れた石も滑りやすかった。 樹林が切れて明るくなった場所に出ると草原越しに穂高平避難小屋が見えた。今にも崩れそうな避難小屋を想像していたが入り口脇にはバルコニーまである立派な山小屋であった |
| 先着のYKリーダーが宿泊手続きを済ませ、管理人の水上さんと談笑していた。今日は風呂が沸くといううれしい話だ。案内していただいてまず荷物を部屋に置いて、アサヒスーパードライ350ml缶(\400)を胃に流し込む。サンダルに履き替えて庭に出てみた。明るいが低い雲が空を覆い、小屋の軒先から見えるはずの蒲田富士の尖がりは穂高平に出かけても望めないと判断した。新ハイキング(670
11年 08月)や山頂渉猟(白山書房)記載のような姿を時分の目で見てみたかったのだが。 持参の焼酎で水割りを作って、YKさんと談笑していると相客の若い男性が入ってきた。「昨年、悪天候で槍ヶ岳に登れなかったので再挑戦」とのことだ。管理人さんが入浴を勧めに見えたので、YKさんから順番に汗を流した。薪で沸かしたという風呂は巨大な切り株を浴槽にした凝ったものであった。夕食も管理人夫人手作りの品数も味も量も満足できる田舎風和食であった。「明朝は早出をして蒲田富士から涸沢にくだる」と水上さんにYKリーダーが話す。水上さんからは「薮山で痩せ尾根があるので注意」とのコメントがあった。 |
| 8月05日(水) 今日が核心である。標高差1800mの薮山、そして岩場を急登し、岩稜を縦走して涸沢へ下る。03:30前に起きて、食堂で即席ラーメンとアルファ米の朝食を早々に済ませた。 ザックに荷物を詰めて玄関に出る。扉の外からYKリーダーが徒歩道から林道へ2人の若い男性が抜けていったと声がかかる。外は霧雨、気温は21℃、気圧は昨夜と同じで安定している。ヘッドライトを頼りに右俣林道を登る。前方にヘッドライトがちらついていた。白出沢奥穂高岳登山口を過ぎる頃から次第に明るくなる。工事飯場と重機を左に見ると樹林は白出沢で切れ、広い沢を貫く林道の上下で河川工事が行われているのが見えた。通行止め馬ゲートの間を通って林道を進んだが行きどまりで対岸に渡ることができない。ゲートに戻ってみると左脇(下流側)に登山者用の道が設けられていた。 白出沢を渡りきると徒歩道は石だらけの細い登山道に変わり、左折して再び樹林帯の薮に入っていた。情報では数分で蒲田富士取り付きがあるはずであった。右手(山側)にあるという目印テープを探して念のため10分も進んだ。道が右俣谷に向かって下がっているのに気が付いて引き返す。なんと白出沢左岸から1分位のところの右手(白出沢側)の大きなコメツガ(シラベ?モミ?)の脇に立つ細木に濡れた赤布がぶら下がっている。左手(山側)の笹薮には雨水跡と間違いそうな踏み跡があった。「この奥10m位のところに赤テープが結んである」とYKリーダーがいう。尾根取り付きに違いない。小休止した後、暗い樹林帯の薮に踏み込んだ。 標高1600mから急傾斜の広めの尾根が標高1700mまで続く。登りに強いYKリーダーはドンドン薮を漕いで行くが、TIは10歩進んでは5秒の休みを取らないと息が切れて登ることができない。緩斜面に入ると今度は踏み跡に被さる笹が高く太くなり邪魔をする。これまでのところ適当な間隔で目印テープがぶら下がって不安はない。情報にあった倒木もそれほど邪魔をしない。むしろ複数の目印テープが同じ標高で左右に離れて結ばれている場所がいくつかある。霧雨が流れる樹林でその先のテープを曇った眼鏡を通して探す努力が必要であった。さらに何回か踏み跡が切れて、先行するYKリーダーの掛け声に従って新たな踏み跡に移らねばならない。先行者の道迷いを思わせる跡がいくつもあった。我々はより高い個所へ進めばよいのだが濡れた笹の茎が足を滑らせ、息が切れ、足に疲労が貯まった。 標高1900mの辺りから薮に岩が現れて登るにつれ大きくなる。とうとう細尾根が岩場に変わり、シラベと薮が岩の転落を抑えているようになり、さらに100mも登るとシラベが細くなり、薮も低くなって岩が卓越した。 藪漕ぎが楽になるかと思っていたら再び背丈並の笹薮尾根に交代する。光や水分が多い土壌場所では茎を太く高く、不利な場所では細くて低い笹薮に代わるのだろうが嫌なものだ。 尾根の踏み跡には古いゴミがぽつぽつと落ちていた。しかし情報にあったテント場はどこなのだろうか、見つからなかった。急傾斜の笹薮で突然が右手から伸びていた笹に眼鏡を跳ね飛ばされた。落ち着いてスペア眼鏡を取り出してかけてみた。視界が変だ。右のレンズがない。レンズを止める螺子が外れてケースにレンズが残っていた。霧雨の中、左目だけでは飛んだ眼鏡を探せない。YKリーダーを呼んで探すのを手伝ってもらった。幸運にも少し下がった踏み跡に落ちた眼鏡を見つけることができた。藪漕ぎに備えて眼鏡紐を持参したのに侮って装着していなかったことを強く反省した。もちろんすぐに眼鏡紐を眼鏡につけたのは言うまでもない。 左右の針葉樹林にダケカンバが混じり、それも次第に灌木と薮に変わりハイマツが混じり始めた。ハイマツが優勢な尾根にでたが霧雨で前後左右(東西北南)の展望が全くない。標高2630mあたりで切り立った露岩の尾根が現れ、固定ロープが尾根の右上から岩場を巻き気味に敷設されていた。最初は1本、途中から材料も長さも風化の具合が違うロープが数本あった。全ての固定ロープの上端は細くて尖った岩にビレイしてある。 ロープ上端から後はハイマツを掴んでの登りだ。平坦な尾根末端(約2700m)に到着した。ここからは蒲田富士の「長い頂上」(新ハイキング)となる。南から流れる霧がチングルマの穂を濡らして趣あるが前後左右の展望はなく、穂高涸沢岳の姿を見たかったが霧カーテンで隠れていた。蒲田富士頂上を示す目印なり山名板なりを探しながら踏み跡を辿っていたら左手にぼんやりした小峰、右手に急降下する踏み跡が出てきた。YKリーダーが「ここは涸沢西尾根への下降点、細引きが必要になるかもと想定した斜面上に着いてしまった」という。残雪期にしか登られない山だから雪の下に山頂標を置く登山者があろうはずはない。一息入れつつ、斜面を底まで覗き込んだ。 急斜面の踏み跡は崩れやすい土石混じりだったがコルまでロープを出す必要はなかった。最初のコルは左手の谷斜面に雪が残る草付のお花畑、ハクサンイチゲ、ヨツバシオガマ、ウサギギク、オンタデ、アキノキリンソウなどお決まりの美しい高山植物の群落が右手から流れてくる霧の露をまとっていた。風で揺れる木々を見ながら尾根上の瘤を越えるとまた左手に雪渓があった。霧で雪渓の上端しか見えない。そろそろ滝谷の端に来ているはずだが谷の底も滝谷の壁も霧の向こうであった。シナノキンバイの鮮やかな黄色を霧を透かして見せている草付斜面と稜線の境を進み、ハイマツと岩が混じる細い稜線に登りついた。 霧が強風に舞い、雨具を湿らせる暇がない。強風でバタバタと音を立てて膨らんだ雨具の表面が乾き始めたが霧が眼鏡の右眼を曇らせ続けて一歩一歩が遅れてしまう。尾根の上に屹立した岩が見え、先行したYKリーダーが偵察したが左側(北)にルートが見えないとのことで岩場の右(南)のハイマツ薮を利用してガレ場を登ることになった。ガレ場はほとんどすべての苔むした石が浮いている。切れたロープやさびた鉄缶詰缶が残っているのでルートに間違いはない。ハイマツ薮との境を登るが徐々にハイマツの丈が短く、幹が細くなる。頼りにするには心もとなかった。こんなハイマツだがガレを抑えているので頭上からの落石に心配無いようだった。 上り詰めてYKリーダーが立つ稜線2900mに辿り着いた。ようやくというのが正確な感想だ。見ると岩稜に明瞭な踏み跡が北東から南東へ続いていた。もしかしたらあの岩場から別ルートでつながっていたのかもしれない。この岩稜が涸沢西尾根に違いない。 尾根が南正面向きかつ標高が上がったせいか霧が雨粒に、弱風が正面からの暴風に代わった。眼鏡も両眼が曇り、雨具は上から下までびっしょり濡れてしまう。ただ、ただ、風に飛ばされないようにバランスを保ちながら尾根を進んだ。先行しているYKリーダーの姿も暴風雨に隠されてしまった。野球帽の縁から垂れる滴を啜り、足元からつい前方に目を上げて見るとYKリーダーが真ん前に立ち、傍の岩に白ペンキ目印があった。西尾根を抜けて涸沢岳一般道に合流したのだ。 暴風雨に追われて涸沢岳(3103m)を通り過ぎ、左にP13110mを見ながらひたすら逃げる。急降下して穂高岳山荘に直行した。小屋直前(とYKリーダー)の曲がり角でポケットビニールカッパを着た若い女性が2人、雨風で動きが取れずに固着して上を見上げていた。「上は雨風がもっと強いよ」とYKリーダーもTIも声をかけて下る。テント場には一張りのテントもない。皆、小屋に避難したらしい。ようやくたどり着いた穂高山荘前にも人の姿が全くなかった。もちろんテラスから涸沢、屏風岩、常念山脈も見えない。ただ風裏になったせいで霧だけが歩く邪魔になる。そんな場所にテントを張り始めている女性のパーティがいたのには全く驚かされた。 ザイテングラードへの降り口には小屋の人が切った雪の階段があった。いいね! 雨雲を抜けながら慎重に下る。こんな天気だがザイテングラードの岩道をどんどん登ってくる人たち、単独、少人数、集団、老若男女と何度もすれ違い、コンニチワと声を掛け合う。濡れた岩を踏んで下り歩くのはつらく、涸沢カールに近づくと短いながら滑りやすい雪田歩きさえ加わった。 涸沢ヒュッテがカ―ルの底に見える。まだまだ標高差がある。展望コースの分岐を過ぎ、花を着けたナナカマドなどの灌木帯に入って階段道をたどると涸沢小屋、そして目前に涸沢ヒュッテがあった。登山路右手には数多くのテントが色を競っていた。目前を猿が横切り、すぐそばで芽生えたばかりの草をむしって口に入れ離れて行った。けたたましい鳴き声に振り返ると雪渓の上を4匹ばかりの猿が取っ組み合いつつ走っていた。テント場管理人さんに猿の群れについてきくと「ずっと前からのぼってきているよ。熊だって」とそっけない。霧が降る中、石を葺いた登山道と階段を登り、ようやく涸沢ヒュッテの受付に着いた。 |
| 8月06日(木) 夜中には月が朧に見えたり、強い雨が二、三度降ったり天気がコロコロ代わって判断が決まらない。朝になっても前穂北尾根は雨雲に覆われ、5・6コルコースに好天好展望を望めそうにない。YKリーダーの決断で計画変更して一般コースを下ることにした。 小屋朝食を摂り、一般登山者と一緒にゆっくりと小屋を出た。本谷橋手前で路肩から転落した男性を引き上げるというハプニングもあったが霧雨に煙る屏風岩、横尾尾根を見つつ横尾谷を出て梓川沿いに下って行った。横尾を過ぎるあたりからゴミ回収袋を下げた人達とすれ違うようになった。その数は徳沢、明神と上高地に近づくほど増えた。地元の人たちではないようだ。こんなツアーもあるのだと胸が熱くなった。 上高地に近づくと予想どおりサンダル、ウォーキングシューズの旅行者が混じる。小梨平キャンプ場の入り口で「12:00〜19:00営業」の風呂看板がかかっているのをYKリーダーが見つけた。今日はシャワーと計画していたので浴槽にゆったり入れるなら存外の好都合、うれしいと受付で可否を尋ねた。30分ほど早かったが「もう湧いているのでOK」とのことで\600を払って2日分の汗と疲れを流すことができた。爽やかな気分でバスターミナルに向かう。こんな曇天でも河童橋の上は行列、渋滞や砂煙がないだけ気分が良い。バスターミナルではタクシーを待つ客の行列はなし、新島々行バスの乗客も30人程度と台風の影響は上高地でも大きいようだった。松本からはわざと普通列車に乗って中央線の旅を楽しみ、ほぼ予定の時刻に帰宅することができた。 |
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