| 船ヶ洞山・美濃俣丸・三周ヶ岳 |
| 【期日】2016年03月22日〜24日 【メンバー】CL(Qさん)、TI 【アクセス】 (往路)03/21 (集合)22:20新宿新南口(京福ドリーム福井号101便2号車10D)23:17(22:50)→ 03/22→6:22福井駅東口→8:00タイムズカーレンタル→8:18コンビニ(水等購入)8:40→ →9:54広野ダム5→岩谷林道ゲート10:02→10:18宇津尾部落 延命地蔵堂前駐車場→(船ヶ洞山)→広野ダム→ →15:40鈴谷川幕営地 (復路)03/24 広野ダム幕営地15:18→15:58しきぶ温泉湯楽里にて入浴→6:30福井駅→タイムズレンタカー→ →福井駅(高速バス) 21:50→03/25→5:15新宿東口(解散) 【コース・タイム】 《03/22》宇津尾部落延命地蔵堂前駐車10:55→13:17船ヶ洞山(三角点V808)13:30→15:13延命地蔵堂 歩程 04:18 《03/23》鈴谷川幕営地5:39→林道分岐→6:07渡渉点449m 増水で渡られず林道分岐へ引き返す6:17→ →林道分岐→6:38尾根取付→7:49標高点912m→9:19標高点1159m→ →10:09美濃俣丸(1254m) 周回縦走を諦めて往路を下山10:39→11:09標高点1159m→12:24標高点912m→ →13:33尾根取付→14:00鈴谷川幕営地 歩程 09:11( .《03/24》広野ダム幕営地5:11→岩谷林道ゲート→6:24三周ヶ岳登山口(夜叉龍神社 標高500m)6:32→ →8:57夜叉ヶ池(標高1150m)→10:10P1252分岐→10:43三周ヶ岳(T三角点1292m)10:49→ →12:10夜叉ヶ池1150m→13:41三周ヶ岳登山口(夜叉龍神社)13:49→14:50広野ダム幕営地 歩程 9:39 |
| 【コメント】 |
| 新座の近く、すなわち奥武蔵は人工林で覆われた黒山が続き、冬寒の頂きから眺めても秩父奥多摩や西上州の山々、広い関東平野の端にある遠くの関東山地、浅間・榛名・赤城そして富士くらいしか雪帽子を被っていない。シベリアの冬将軍が送る北風が対馬海流からの水蒸気を吸い上げて運んでくる大雪は殆どが山陰、北陸、信越、東北、北海道の分水嶺の日本海側に積もってしまう。奥武蔵では雪が降った後でも数日で雪が消えてしまう。北風は空っ風となって杉林を鳴らすだけだ。 雪を楽しむには新座を出なくてはならない。 高山や厳冬期の寒さは70歳を超えた身にはこたえる。暖かな春風が積雪を締め、春の陽光が山々を白く輝かせ、ブナが芽吹く残雪期こそが心が躍るときだ。 今年もQさんから残雪を利用した山行プランが送られてきた。全国的に例年の半分も降雪がなく、異常なほど暖かかったこの冬のせいで春の残雪の具合を考え、天気予報を見計らってアクセス、日程、行程を最終的にQさんが決めることになる。その上情報の少ない山々では登山口での現地判断が不可欠だ。 さて、両白山地と伊吹山地の間にある冠山〜金草岳〜笹ヶ峰〜美濃俣丸〜三国ヶ岳は福井と岐阜の県境であると同時に本州分水嶺主脈をなし、支脈に一等三角点峰である三周ヶ岳を従えている。関東の登山者にとって冠山以外はなじみが薄く、未知発見の楽しみがある。今回のQさんプランでは南越前町の広野ダムをベースに笹ヶ峰〜美濃俣丸を周回縦走、夜叉ヶ池経由三周ヶ岳往復、付け足しの山として船ヶ洞山か越前甲山を登ることになっていた。 初日に広野ダムに到着してみて、岩谷川沿いの夜叉ヶ池への林道が閉鎖中であることがわかった。軽荷であるとはいえ、三周ヶ岳を往復すると広野ダムに帰還するのは日没後となると、日程を変更して初日は船ヶ洞山、3日目に夜叉ヶ池経由三周ヶ岳を往復して福井に帰り、北にある越前甲山登山は断念することとなった。 今回の主目的である2日目の広野ダム〜美濃俣丸〜笹ヶ峰周回縦走も、2日目当日に林道を進んで初めて雪解け増水で沢を渡渉できないことが分かり、ショートルートから一般ルートに変更せざるを得なかった。その一般ルートさえも残雪が薄く濃い薮が出現していた。予定時間をオーバーして美濃俣丸に登ったが笹ヶ峰方面を頂上から偵察して初めて尾根筋にさえ激薮が現れているのが分かり、周回縦走を諦めて往路を下山する決断をさせられた。われわれの跡を踏んできた岐阜パーテイのリーダーによると例年の2倍の時間を要したとのことであった。最初に踏み跡をつけた我々が調査通りの時間で歩けなかったのも無理はない。 船ヶ洞山は椿の薮が少々煩いが人や鹿・カモシカの踏み跡に沿って境界標杭とその目印のピンクテープがあるので、尾根を辿れば林道に出る。林道から頂上尾根へ上る箇所もコル近くで踏み跡探せばよかった。 広野ダム発夜叉ヶ池経由三周ヶ岳は無雪期向きであった。ゲートから夜叉龍神社駐車場までの長い林道歩きは別として、倉ノ又谷の左岸断崖につけられた狭い登山道に谷へ斜めに積った雪をキックし、深い渓谷を見下ろしながら歩むのは肝が冷える。地形図には峡谷の底近くをクロスし、何度か渡渉して両岸を歩む破線路が記されている。どう見てもこの破線コースは現在、残ってないようである。夜叉ヶ池には岐阜県の揖斐川から登るコースもあるようだ。残雪期にはこちらを利用する方がリスクを低減できるのではなかろうか。 ところで登山ベースとなった福井駅近辺は北陸新幹線2022年開業予定でいたるところ新装工事中であった。「夕食を」と古いアーケード街を歩いたが飲み屋ばかりでいわゆる郷土料理提供の店がみつからない。名物のソースカツ丼と下ろし蕎麦でお腹を膨らませたが物足りなかった。タイムズレンタカーで紹介してもらえばよかったと反省している。 |
| 【記録】 |
| 《03/22》 広野ダムから引き返して橋立集落を過ぎ、宇津尾集落の延命地蔵堂入口から左折して交差する細道を選んで延命地蔵堂に向かって登る。急坂を登りきると延命地蔵堂の駐車場があった。 立派な延命地蔵堂前にはその由来を記した看板が立っている。隣にはこれも立派な鐘楼がある。延命堂の周りを一巡してみた。地蔵堂裏には石像が並び、その奥に登り口と思える踏み跡がある。踏み跡の右の薮の中にピンクテープがぶら下がっていた。「薮に取り付くのか?変だな」と思いつつ、大銀杏の根本で登山の準備をした。晴天で風がすこし吹いているが暖かい。 |
| 見つけていた延命地蔵堂裏の急斜面についた踏み跡を登って杉人工林に入る。薮を通らずに人工林と再生林の間に踏み跡が続いていた。踏み跡は溝になっている。何世代もの人が歩いた作業道だったのだろう。テープが巻いてある箇所には赤や白の杭が差してあった。登り口のピンクテープは同じく杭の位置を示したものだろう。テープを探しながら明るい林を登る。薄いながらも下薮や潅木の枝が顔や手足に当って煩わしい。林の中を歩むせいか展望はない。 標高点516mで昼食休憩とした。この標高でブナや椿が出てきた。それらの木立を透して雪山が見える。 尾根に椿がしだいに増えて薮になり道をふさぐ。邪魔をする椿の枝をかき分けて登る。薮の中をすり抜けている鹿・カモシカの蹄道を選ぶと幾分楽に登ることができた。 |
| 椿薮を抜けると鹿のヌタ場と残雪があった。ブナ林の斜面に何株かのエビネの大きな葉を地面に伏せていた。野生のエビネに会うのは何年ぶりかになる。 またまた椿の薮が斜面を覆い、次は笹が薮の主役に入れ替わった。笹の上に立つミズナラとブナの木立の向こうにようやく雪山が展望できるようになった。日当たりも良くなったせいかカモシカらしい踏み跡や溜め糞が土や残雪の上や多数散らばっていた。 |
| 南から敷設された林道に出た。林道の末端には雪田が残っていた。しかし目の前の林道は枯れ薄の薮が続き、残雪がない。枯れ薄を掻き分けて林道をコルを目指して進んだ。宇津尾谷川を挟んで北東に雪尾根が続いているのが展望できた。雪尾根の下の斜面は黒々として残雪がないことも分かった。コルの前後を睨んで林道から尾根に楽に登ることができる箇所を探した。人かカモシカのいずれか判定できないができるだけ落差がない法面の踏み跡を細い木を左右に掴んでよじ登った。上がった尾根筋も薮めいているが踏み跡が続き、尾根の先に頂上稜線が見えた。尾根を南西から西に曲がって頂上稜線に乗った。広い頂上稜線は残雪が広がっていた。 |
| 平坦な船ヶ洞山(三等三角点 807.5m) の頂上はブナの疎林で覆われて展望が利かない。それでも残雪から上に伸びる細いブナの小枝に船ヶ洞山の山頂の印がぶら下がっていた。近づいて赤布を手にとって見ると福井三角点探訪会と記してあった。三角点は草地に立っていた。この標高でも雪解けが大幅に進み、残雪が薄い。明日の縦走が心配だ。 |
| 休憩した後、自分達の足跡を辿って下山する。頂上尾根のブナも芽が膨らんでそろそろ鱗片が離れそうだ。枝に古い白ポリテープが結んであるのを見つけた。この山に登る人もそこそこいるらしい。しかし鹿・カモシカの糞がそこらあたりに散らばり、新しい蹄跡も残る。獣の天国に違いない。コルの先の笹薮に続く踏み跡に進んでみた。木立が切れると美しい雪山が展望できる。尾根筋の踏み跡は濃い薮に突き当たり消えてしまう。やはり林道に下るしかない。登りと同じく細い木を頼りに法面を下った。林道から往路の尾根筋に入り獣道・踏み跡を辿って下る。登りは逆茂木になって抵抗した椿薮も下りは素直に体を支えてくれる。急な作業道も下薮の小枝を掴みながら楽々下った。延命地蔵堂裏に着いて左を見上げると草付にはエンゴサクやアヅマイチゲが開花していた。花の春はもう標高250mに来ている。 |
| 《03/23》 歩程11時間として鈴谷川幕営地を5時半過ぎに出た。曇空の下、橋を渡って鈴谷川沿い林道に入り杉林の中を進む。林道が地形図と違ってヘヤピンになり、斜面を登っている。驚いたが「そのまま進んでおかしかったら引き返し、沢に下ろう」とのQさんの宣託どおりに林道を辿った。歩めば地形図通りに右岸沿い林道になり一安心できた。林道は薄薮の一般ルートに分かれるが我々は橋を渡って左岸林道を進む。 渡渉点449mについた。見れば雪解けで増水して沢は浅いところでも深さが膝上まである。もちろん水の流れも強い。轟々と音をたてて流れていた。対岸の林道には朽ちた廃車が見える。流れの中の岩には車が渡ったと思われるコンクリート橋の遺物らしいものが引っかかっていた。遺物や岩を跳んで渡っても滑って転落する恐れが大きい。もちろんそれらの上に足跡はなかった。渡渉点の上下を2人で偵察して結局渡渉しないことに決め、かってQさんが登った下流の橋の袂で分岐した林道を詰める一般ルートを辿ることにした。歩程が片道30分は長くなるとのことだ。 |
| 林道分岐へ引き返して右岸に移った。右岸林道には潅木が育ち、斜面からの落ちた石や土砂が路面を荒らしている。山側の斜面にはダンコウバイやヤマザクラがもう咲いていた。林道がヘヤピン曲がりになる角、右手に崩落面が目立つ箇所が尾根取り付き点になる。林道に生えた小木に目立つ赤テープが結び付けてある。しかし肝心の杉急斜面にはなにも目印がない。植林された杉の木の間に薄い踏み跡が北西等高線に沿って斜面を巻いているのが見える。覚えがあるQさんは即、急斜面を直登し、初めてのTIは少し巻道を進んで同じように急斜面を這いながら登って緩やかな傾斜の尾根筋に着いた。北西に下るこの尾根の南面は杉人工林、北面は自然林になっている。全く特徴が無い。TIが登りついた地点には目印がなにも無かったがQさんが登りついた箇所には赤と黄のテープが巻きつけてあったという。 |
| 尾根筋を登る。標高600mから椿の薮が斜面を覆い、渡渉点から北上する尾根の合流点を隠していた。薮の西端をうまく登って薮漕ぎを避けた。等高線700m辺りのブナ・ミズナラ林で休憩した後、厚い落葉を踏んで登る。目の先から雄のヤマドリが走り出て左の木の後に消えていった。 望んでいた残雪がようやく出てきた。前日と同じく、やはり残雪出現は標高が800mを越えている。標高点912mのピークの付近から残雪が繋がるようになった。しかし細尾根に入ると雪は東斜面にへばりつくだけになり、尾根筋には薮が続くようになった。尾根筋を失わないように心がけると薮こぎになり息が上がり、額の汗が目に流れ込む。標高1000m辺りで休憩して行動食を口に入れた。木々の枝を透かして遠くに雪山尾根が見えるようになってきた。 |
| 元気を幾分取り戻して登り始めた。できるだけ薮を避けて残雪を拾う。朽ち掛けた目印布が薮の中にぶら下がっていた。残雪を続けて歩きたいがなかなかそうは行かなかった先人の苦労が忍ばれる。苦労は当たり前だ。 雲を通して薄日が差し始め、霧も上がりかけて美濃俣山が現れた。展望が利き始めたものの尾根には難物のツゲ・石楠花の薮が出てきた。そんな薮でもうっすらと踏み跡見える。人気の山だと推定できた。踏み跡を外さないように石楠花の枝を掻き分け、柘植の幹に乗り、どうにか前に進んだ。Qさんが「前回引き返した地点を通過した。これからは未知の領域」という。霧が薄くなり目の前にそびえる峰が見える。現時点との標高差は高々200mのはずである。だが薮を通らねばならないとしたら所要時間が読めない。 |
| 標高点1115mピークに登りついた。Qさんはアイゼンを着けたというがTIは薮が心配でそれどころではない。休み休みしながら標高差100mを登る。美濃俣丸から笹ヶ峰へ至る縦走路の展望ができ始めるが、至近の無名峰にも大きな薮が出現している。その先の縦走路にも薮がこげ茶色になって見えた。Qさんは例によって急斜面を先行している。いよいよQさんが休む美濃俣丸の山頂が至近になったが見れば丈の低い笹薮で驚くことに残雪がない。 |
| 美濃俣丸の山頂には三角点1253.8mが露出していた。幕営地を出発してから約4時間半、渡渉点で右往左往し、30分は余分にかかるとのことであったが予定より40分遅く着いたことになる。あの薮や腐れ雪を思えば思いのほか早く登って来た。しかし曇天で美濃俣丸山頂から縦走路を笹ヶ峰方向を眺めれば北方の縦走路には大きな薮が黒々と幾つも出ている。Qさんの決断で大河内山(1288m)まで足を延ばすのさえ諦めることになった。明日登る三周ケ岳方向を見て往路を下ることにして休憩することにした。 |
| 下り始めて直ぐに熊鈴を鳴らしてきた岐阜県の女性4人(全6人)パーティに会う。話すと遅れて男女2名が登ってくるとのこと、お互いにこんな天気で美濃俣丸に登る人がいるとはと驚き合った。すれ違って暫く下った薮で遅れていた男女2名に会う。Qさんと男性(ベテランリーダー)と状況を話し合う。岐阜Lは「これまでの2倍の時間がかかった」、岐阜女性は「二度目なのでもうやめようと思った」と、Qさんは「頂上は直ぐそこ」と激励していた。Qさんが岐阜Lと女性に聞いたところでは「先週 三周ヶ岳に、悪天候で夜叉ヶ池まで、池からは残雪があった」と情報である。彼女は福井側から登ったのかな、美濃側からかな、もっと聞くべきだった。 |
| 薮にはところどころに岐阜パーティが付けた新しい赤布もあり、それらの目印・踏み跡を頼りに快適に下ることができた。標高点1115m峰を過ぎて密薮に突入した。薮のタムシバはまだ鞘を被った花芽をつけているが我々の手足を妨げた。薮を抜ければ美しいブナ斜面がある。青空が欲しいが上空は白い雲、林の中は霧が覆う。尾根筋を辿るが途中にある広い尾根、左右に見える小支尾根がおいでおいでと招いているのに騙されないことが肝心だ。 |
| 標高890m辺りでホイホイと鳴く声聞く。これも昨夜聞いたミミズクなのだろうか。 厚い落葉で踏み跡が消えてしまった。登りは右手に椿薮を見て境を登って来た。そこで左に降りる場所を探しながら尾根を進んだが椿薮の真ん中に突入してしまった。目印テープもない。地形図を見ると南尾根に迷い込んだと分かった。やはり尾根分岐は下降時の要所であった。椿薮を西に出て西尾根に帰り着いた。Qさんは既に西尾根にいる。 尾根取り付きに下る杉人工林の入口を探す。今度はQさんが用心しすぎて東へ迷い込んだ。引き返して赤と黄色の目印を確認することができた。ここが一番の要所、核心(岐阜パーティの早足2名は降り口を通過して尾根を西に詰め過ぎ、ひと騒動を起こしていた。尾根取り付きから右岸林道を下る。橋を渡ると路傍に往路では目に入らなかった不動尊の祠があり、その先の法面の岩場でイワナシが開花していた。帰り着いた鈴谷川幕営地で甘い紅茶を飲んで薮漕ぎの疲れを癒した。。 |
| .《03/24》 昨夜は北西からの風が強かった。20時頃、フライがサラサラと鳴った。外を覗くと細かな雪がヘッドランプの光に輝きながら舞っていた。雪音が消えた深夜にはフクロウがゴロスケホホーと鳴きながら遠くからテントに近寄り、また去っていった。人造湖の上をオーオーと鳴いて何度か通り過ぎる鳥(ミミズク?)の声も聞こえ、遠く近くでトラツグミが鳴いていた。広野ダムは夜も鳥が多い。 |
| まだ暗い広野ダム幕営地を出る。朱色の橋への舗装路を左手に別れ、すぐ近くの岩谷林道ゲートを抜けた。人造湖側にはソメイヨシノの古木が並んで続いている。今はまだ花芽が堅いが満開時にはさぞや見事だろうと思われる。水量計との表示がある施設の下には堰堤から落ちる雪解け水が沢音を轟かせていた。標高点384mを過ぎる頃には岩谷川の谷間も明るくなって周囲の様子がハッキリしてきた。やはり殆ど残雪がない。林道が簡易舗装から砂利に代わり細くなる。林道脇には墓地が残され、民家敷地や畑の跡があった。人気の無い建物群を対岸に見て福井県が作ったキャンプ場(看板では)を見て、「利用者は?」と思う。林道を延々と歩く。二ヶ所ある橋の辺りで林道が川近くまで下って再び登って標高を回復する。車のためとは言え、歩く身には辛かった。 |
| 日本海側林道果ての三周ヶ岳登山口に夜叉龍神社がある。 標高は500mである。広い駐車場の脇にある夜叉ヶ池公衆便所は扉に板が打ち付けてあって閉鎖中だ。ゲート閉鎖だから当然ではあるが残雪(林道)の状況を見てゲートもトイレも開けて欲しいものだ。 まず桂大木の説明看板を見て桂を見返し、越美山地緑の回廊、夜叉ヶ池特定動物生息域保護林や岩谷国有林の説明を読んでヤシャゲンゴロウと自然保護の大切さを知る。また泉鏡花の夜叉ヶ池一節を刻んだ石碑を見て自分の知識無さを恥じた。 |
| 道標に従い橋をわたって登山徒歩道に入る。頭上の石鳥居の額には夜叉龍神社とある。ご神体が山の上にあるということだ。電光道を登ったら道は断崖巻道に変わる。地形図破線と違うが「こんなこともあろう」とそこでは思った。登るにつれ谷の奥に三周ヶ岳の稜線らしい尾根(県境尾根というほうが正しいか)が見える。残雪が少ない。狭い巻き道の所々のスカスカの残雪にピッケルを突き立てて我が身を確保する。どうしても目に入る断崖の遥か下には雪解け水を流す沢があった。一歩一刺し、「誤って左に落ちたら」、「この断崖の細道に残雪が続いたら危なくて進めない」と肝を冷やしながら歩む。Qさんはいつものようにスイスイと進みTIをおいて行く。 最初の橋を通るが地形図の沢沿いルートとはどうも違う。ここまで断崖巻き道から渓谷を見下ろしても破線で記してある対岸の道は跡さえ見えなかった。登山口の看板に記してあった「岩谷の大栃」を右に見る。「 栃への枝道」案内があるが先を急いだ。 |
| 断崖巻き道から開放されて二番目の橋を渡る。左岸斜面に取り付く。「池まで1500m」の道標を見て「現在地を確認できた」と安心すると同時に「これからまだまだ登らなくてはならぬのか」とウンザリ気持ちが出た。急斜面を電光に登る。斜面から尾根筋に出たが曇り空から雲が降りてきて回りに小雪が舞い始めた。寒い。標高を稼いだせいか、デブリだけでなく路肩にも残雪が続くようになり、寒気のせいで腐れ雪の腰がしっかりしてきた。そこでようやくクランポンを装着して登り始めることできた。登るにつれ頂上だけを覆っていた雪雲が山腹を覆い出し、風に乗せて周りに粉雪を撒いていた。昨夜から降り続けた雪が登山路の残雪を白くお化粧しているようになった。 |
| 登って来た尾根が急な斜面に出会う場所に「池まで200m」の道標が立つ。虎ロープ用の鉄棒が2〜3本立っているが、残雪斜面で先のルートが読めない。「ここから巻くか登るか、ここが地形図の巻き道分岐点なら巻くべきだが」と思うが「どうもまだ分岐に登りついていないのではないか」との疑いがわく。風雪の中、Qさんと相談して左斜面を巻いた足跡を辿ることにした。足跡の従い、約50m下って尾根までブナ高木林の急斜面を登り返す。尾根は平坦な小ブナ疎林地で残雪が一面に広がっていた。回りにあるはずの三周ヶ岳や三国ヶ岳に延びる尾根やその上の峰々は雪雲に隠されて全く見えなかった。 |
| コンパスに従い、ブナ幼木の間の残雪を踏んで窪地に下った。風雪が舞い、単なる窪地か池か判別できない。ヤシャゲンゴロウの説明看板が雪の上に僅かに出ているのでここが標高1150mの夜叉ヶ池とわかった。池の周りの木道も積もった新雪の下、水面が雪で覆われて池の水際がはっきりしなかった。残雪だけでなく昨夜から雪が降り続いているとの印象であった。 |
| 池の縁から残雪を踏んでブナ高木林の急斜面を直登した。昨夜からの風雪が海老の尻尾になり木々を樹氷で化粧している。登りついた尾根筋に期待した厚い残雪がなく薮が出ていた。先行するQさんが笹薮に夏道を見つけた。しかし前夜からの雪に押されて笹が夏道に伏せこんでクランポン歩きの邪魔になる。笹を起こし、左右に分けなければならない。それでもQさんを追いかけてTIも尾根を北東から東に曲がった。1230mの小ピークを越して東から北に歩みを変える。暫く笹薮が続いた。 |
| 大きな岩(岩峰というべきか)の右下を巻いて、今にも崩れそうな雪斜面を進む。無雪季なら楽々通れる道がある筈だが今は雪の下だ。「例年ならば雪堤があるはず」と思いつつ、どうにか残雪リッジから薮にたどり着くことができた。 薮の先は岩場が続き、クランポンの爪が足がかりで悲鳴をあげる。登りにくい。ようやく雪雲が薄くなり三周ヶ岳の頭まで見通せ、また振り返って来た道を目で辿る事ができた。南西の黒い崖のある峰が夜叉ヶ岳だろうか。三国ケ岳はハッキリしなかった。Qさんは薮と残雪が交互に出てくる夏道をスタスタと進むのだがTIは遅々としてはかどれなかった。 |
| Qさんが待っている1262mピークの尾根分岐に着いた。笹や潅木の薮だけでなく小木の薮が出ていて声のほうに木の間をすり抜けるにはなかなか難しかった。尾根分岐の先には再び笹薮(笹薮の間の夏道)になった。 本州主分水嶺から分岐した三周ヶ岳ヘ派生する尾根分岐に着いた。県境尾根から岐阜県に進むことになる。風雪が緩んで尾根筋が見えるようになってきたが三周ヶ岳などの頭はまだ雲の中にあった。一度コルに下って登り返すと三周ヶ岳の山頂尾根の端に出た。 |
| 三周ヶ岳の頂上は残雪で覆われて一等三角点(1292.0m)を見つけることはできなかった。しかし雲が山から離れ雪が止み、山頂から北西から南西に続く本州分水嶺の山々を展望することができた。残念な天気なので写真撮影を早々に済ませて往路を帰ることにする。 |
| 気温が上がったせいか夏道を化粧していた新雪は融け、登りに邪魔していた笹や潅木も立ち上がって素直に道を開けてくれた。県境尾根分岐やP1262m分岐も岩場のアップダウンや大岩下の巻き道も道迷いや足を滑らすこと無くどうにか通過することができた。振り返って大岩を見てみると「こんなに薮が出ていたのか!」とこの春の雪解けの早さに改めて驚く。 尾根から残雪を利用して樹氷をつけたブナ林の斜面を夜叉ヶ池に急降下した。池の周りの尾根に立って振り返ると三周ヶ岳が小さく見え、「右から頂上に詰めたのだ」と教えてくれていた。 |
| 池の岸に立って青空が覗いた夜叉ヶ池を見つめなおし、尾根に上がって夜叉ヶ岳方向や三周ヶ岳方向を改めて見た。 復路は小ブナの枝に結ばれている赤テープを辿り、平坦尾根を詰めて尾根から急斜面を下ることにした。なんとすぐに「池まで200m」の道標に出会った。 腐ってきた残雪を時々踏み抜きながら標高900mまで下り、クランポンを外して休憩した。次第に残雪が切れ夏道となる。電光道を塞ぐ倒木を境に等高巻道に移る。デブリが電光道を隠して往路で悩んだポイントだった。9分下っていよいよ渓流の上流部に下ってきた。青空が谷の上に広がるが流れる白雲の足は早い。下流の橋を渡り、崖の巻き道に入った頃から強い風が吹き付けた。風には通り道があるようで山鳴りをし、落葉が舞い上がる箇所があるかと思えば陽射しで汗ばむ場所もあった。沢音が轟くので対岸を見ると滝がある。これが看板にあった「多段の滝」かなと思いつつ通り過ぎた。 |
| 目前に鳥居が立ち、夜叉ヶ池・三周ヶ岳登山口(夜叉龍神社)に無事に帰ってきたことが分かった。先行したQさんに合わせて鳥居の脇の日溜りで小休止し、林道を下る。左右を見ながら春を探した。ミツマタやキケマンの黄色の花を見つけたがまだ色鮮やかな春の使者はまだ訪れてないようであった。広野ダム幕営地に到着して明るいうちにテント等撤収することができた。 |
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