南北海道 大平山(1002.7m、一等三角点)・雄鉾岳(999.6m、三等三角点)他
【目的】道南の山々を巡る
【期間】 2012年6月28日(木)〜7月3日(火)
【参加者】CL(MN)、SL(MT)、TI、他 新ハイキング東京支部(KK、NT、KM、YH、MY、SY、MU、MK、TS、HY)、新ハイキング(HO)
【記録:コースタイム】
06/28函館空港9:28→11:19六合目11:32→12:31馬の背13:03→13:40六合目=瀬棚町青少年旅行村(泊)
06/29瀬棚町青少年旅行村=6:47千走新道登山口6:57→10:31狩場山10:58→13:48千走新道登山口14:01=島牧ユースホステル(泊)
06/30島牧ユースホステル=4:39泊川登山口手前4:48→9:56大平山10:04→14:23泊川=オボコ山の家(泊)
07/01オボコ山の家6:20→6:21雄鉾岳登山口→10:17男鉾岳10:32→13:20雄鉾岳登山口→13:23オボコ山の家=大千軒岳登山者休憩所(泊)
07/02大千軒岳登山者休憩所6:19=8:09新道コース登山口駐車場8:16→9:45大千軒岳9:50→11:09新道コース登山口駐車場=民宿ゆっくり大沼(泊)
07/03民宿ゆっくり大沼=函館空港
【記録 コメント】
6月28日(金)
09:00に函館空港集合で総勢14人の仲間と南北海道の山々を回ってきた。オリックスレンタカーのバン2台に分乗してまず28日は好天の渡島駒ケ岳は馬の背まで、29日は千走(ちはせ)新道登山口から狩場山山頂を往復し三百名山マニアに満足してもらって、大平山に近い島牧ユースホステルに一泊した。
6月30日(土)
 大平山という山は北海道から九州まで全国に75ある( ウィキペディア)という。この島牧町のオオビラヤマはアイヌ語のオピラシュマ「川奥に岩や崖がある」にちなんでいる。山頂や南斜面に石灰岩が露出して石灰岩地帯に特有の植物が生育している。なかでもオオヒラウスユキソウが有名であるが六月末ではまだ見ることは困難だそうだ。もちろん自然環境保全地域に指定されているほど貴重な生態系なのでオオヒラウスユキソウにこだわることは無い。大平山、狩場山〜黒松内岳の辺りはブナの北限地帯にあたるのでどんなブナ林なのかも興味がある。なおブナの南限は高隈山だ。
 今朝も晴天、日本海から微風が吹いている。島牧ユースホステルを4:20に出発し、江ノ島トンネルを抜けて泊川の手前で右折する。出発後10分で宮内温泉を過ぎて、千走川温泉分岐を道なりに直進、大平山泊川登山口手前の通行止めで車から降りた。看板によると橋台洗堀のためこの先、通行止めだそうだ。ここまで車で20分しかかからなかった。
 ザックを担いで4:48に出発した。橋(島牧大橋?)の近くからすでに工事用の重機は移動したのか姿がみあたらない。橋脚土台保護のために大きな砂袋が何個も並べて置いてある。橋を渡った先には立派な河鹿トンネルがあった。トンネル内部はまだ照明設備もなく、ヘッドランプを点けて進む。トンネルを抜けると舗装道路は終わりになり、広場についた。通常ならここまで車が入る。ま、歩いたのは約20分に過ぎないから不幸中の幸いだ。
 広場の端のダイコンソウ群落横で朝食を済ませて柳、オオイタドリやヤチブキが茂る林道に入った。岩に絡みついたツルアジサイが白い花を満開にしているのを見ながら橋を渡り、林道から徒歩道に入った。林の中に「大平山石灰岩植物保護林」という看板が立っていた。ここが登山口なのだろう。時計を見ると05:33、広場から2分のところだ。
 尾根の裾を少し巻いて谷筋に入った。比較的背の低い広葉樹が左右の斜面に立っている。湿気が十分なためか多種類の大型シダ(奥武蔵の山でも見るようなリョウメンシダ、ジュウモンジシダ、メシダ、イノデ、ベニシダなど)が薮をなし、谷底の道はそれらを潜って急登りになった。風が全くなく、蒸し暑い。所々にヤマウドが葉を広げていてもう少し前だったらと惜しむ声も聞こえた。
 次第にシダ類からユキザサなどの明るい場所に生える草に変わってきた。急登が続く。開花したサイハイランを見つけて列の前から歓声が出た。水に濡れた足元にはオオバミゾホウズキが黄色い花を、タニギキョウが小さな白い花をつけていた。
 06:30頃、道が谷底から斜面にかわり、結実したカタクリがブナの根元のそこここに見られるようになった。電光気味の山道を登る。ブナ林にはサイハイランやトチバニンジンが生えていて春の花が終わっても我々を慰めてくれた。
 長い谷も斜面も07:03に終わりになり尾根に出た。尾根の向こう側は雪崩跡の斜面が広がり、こちら側のブナ林と代わって低木・潅木・草が茂っていた。緑の薮の中、ピンクの花を開いているタニウツギや白い大きな花を広げているシシウド類などが目を引いた。また振り返ると草地から頭を立てているイブキトラノオの花穂の先に、尾根の向こう(西)から狩場山が残雪の縞を見せびらかしているのが見えるようになった。手前のブナやシナノキを従えた新緑のダケカンバの幹も美しい。
 道に斜度がある場所では道に固定ロープがつけてあり地元の方々の尽力に感謝した。春の花は終わったものの草地の端にはイワオウギ、ムラサキモメンズルやアサツキが花や蕾をつけていた。石灰岩露頭崖が近付くとアサツキも増え、花が終わりかけたテガタチドリも混じるようになった。
 標高点810m小ピークの上で休憩する。尾根筋30分ののぼりであった。正面の急な尾根筋に登山道がほぼ真っ直ぐ着いている。尾根の左(稜線の北)には笹群落、ハイマツ群落、シナノキ群落、ダケカンバ群落のモザイク、右側(稜線の南)は全体的には雪崩斜面で草原に岩礫や岩場なども見える。草原にはエゾゼンテイカが開花していた。
 標高点810m小ピークを少し下って尾根筋を登る。見かけより斜度が低くエゾゼンテイカやタカネナデシコの花を花を撮影しながら登ることができた。30分ほど登って5分の休憩をとる。振り返るとハイマツの尾根の上に狩場山が見える。岩場には残り花のミヤマオダマキやミヤマアズマギクがあった。殆どのミヤマアズマギクの株には茶色の丸穂が立っている。塩基性土壌に特有の植物だ。
 休み休みしながら登るのだがロープが着いた岩場が現れて順番待ちが始まった。列の最後についているので待ち遠しい。大平山にはナデシコ科のハコベ、ミミナグサ、ツメクサが入り乱れていて悩ましい。またキク科のタンポポ、コウゾリナなども近い場所に生えていて固有なのか、広く分布しているものなのかこれまた頭が痛い。一人で悩んで時間が経つのを忘れるのも花の名所の山登りだ。と、自分で自分を慰めた。岩礫の草原にはタカネミミナグサ、ハナシノブ、エゾグンナイフウロがそれぞれの適地を占めていた。
 頂上稜線に近づいたせいか噴火湾(東)から雲海が登って来て、山越しをして消えていく。太平洋から海霧が押し寄せている。登山路から見ると尾根筋には右と左頭上にピークがある。地形図と照合すると、頭上のピークの背後に大平山の山頂があるらしい。頂上から単独行の男性が下ってきた。先行していた札幌ナンバーの車の持ち主だろう。行列の前の方に頂上までの情報を話して擦れ違っていった。
  8:56に標高1109mピークに着いた。地形図通り、頂上はこのピ−クの北にある。尾根が緩やかになるとハイマツや笹などの薮に代わる。薮の中も踏み跡がしっかりしている上に手摺ロープで道迷いしないようにルート作りがしてあった。感謝、感謝。
 笹薮を抜けると草丈が低くなり、東風が通り抜けるようになった。立ち休みをして一息ついた後、再び、進む。視界が開けてカスベ岳や日本海海岸を展望することができた。路傍のノウゴウイチゴの実を抓んで早い夏の訪れを味わってみる。笹原を登るとシナノキンバイやハナシノブが咲いた道になった。噴火湾から流れ込んだ霧が日本海近くで消えるのを見ることができるようになったので薮の向こうが頂上かと心踊った。が、まだ薮が残っていた。
 笹薮を抜けハイマツ薮を抜け、つい先日残雪が融けた場所でシラネアオイに会うことができた。見ればシラネアオイの群落、シナノキンバイの群落が足元にある。お花畑の写真を撮って、登山路を駆け上がったところが大平山の山頂(1002.7m、一等三角点)であった。 頂上は薮で囲まれ、360°の展望はない。大きな1等三角点と壊れかけた山名標がある。
 メンバーは順番に記録写真を撮影し、10分ほどで下山にかかった。こんどは狩場山に向かって下る。笹原を下り、ナナカマドの薮を抜けたところで休憩、各自、島牧のコンビニで仕入れた昼食を摂る。段差を下って標高点1109mPピークに着いた。さらに石灰岩露頭下を巻いて、急降下、順番待ちして二箇所のロープを張った岩場を下った。草地を下り、小休止を挟んで標高点810mピークの草地の上で10分間の休憩をとった。風が強くなり、空の雲も増えて天気の変わり目になったと思われた。雪崩跡の潅木草地を下って12:32にブナ高木帯に入り尾根から谷へ斜面を下った。 休憩を入れて25分ほどで谷底に着いた。
 暑いので5分の水のみ休憩を入れた後は蒸し暑い谷筋を下る。Kさんが「水のみ休憩した場所にカメラを忘れた」と言って登り返すという。一人で大丈夫というので先頭のSLの追いついて伝達すると、「TIさん、Kさんのところに行って」と指示が来た。50m位登り返したところでカメラを回収したKさんと無事落ち合うことができた。トランシーバーが無いとこんな時、手間が増える。
 後はウド、ヤチブキ、オオイタドリ、シダなどとそれぞれが密な群落を作っている薮谷を下った。再びサイハイランの群落を見つけて写真を撮ったりしたが下りは女性も足が速くて自然観察の楽しみに欠ける。もう少しゆっくりしたいものだ。13:55に「稀少植物保護」の看板がある登山口に到着した。林道を抜け湯ノ沢橋を渡り、河鹿トンネルの入口までを見る。、列は乱れ、間隔が広がっていた。下りは登りほど苦しくないのだから集団行動に心がけたいものだ。14:23に車にザックを収納し、座席に座って念願を一つ達成した快い気分に浸ることができた。
泊川(通行止め)を14:27に出発して次の雄鉾岳に向かった。泊川橋に出てR229から黒松内駅前に、長万部に抜けた。峠を噴火湾側に越えると大平山から眺めた雲海が空を覆い、強い東風が霧雨を運んできていた。R5から道央自動車道長万部ICに入り、八雲ICで降りて16:10鈴木金物店(01376-3-2221)でオボコ山の家(有料¥500、利用には八雲ワンダーフォーゲル 八雲町の鈴木金物店)の利用手続きをSLが済ませ、鍵を借用してきた。鈴木金物店の主人から「霧が流れても雄鉾岳の谷で切れて山の上では雲がないときもある。この数日雨が降らず暑い日が続いたので水量が少なく、長靴でOK。すこし濡れるのを我慢すれば登山靴でも渡渉できる」と励まされた。
 ダイエー系グルメシティで食事購入したのち、オボコ山の家に向かった。山荘の近くには八雲温泉おぼこ荘(0137-63-3123)があるのでナビに入力すると間違わない。八雲温泉前で舗装道路は終わりになり、砂利の林道に変わる。3号橋 旧鉱山小中校跡、4号橋と過ぎて雄鉾岳登山口の先にあるオボコ山の家前に架かる丸木橋手前に駐車した。丸太橋を渡ってオボコ山の家に荷物を運び入れ、寝場所を決めて歓談、夕食に移った。
 オボコ山の家の炊事場にはLPGガスコンロが2台設置され、沸かせば飲めるという水も引いてあって便利であった。20時前に寝袋に入った。夜半に雨風が屋根を叩いて心配したためか、鼾と夜驚症に悩まされたためか、夜が白み始めたら目が覚めてしまった。
7月1日 (日)
八雲町のHPによれば
 雄鉾岳は八雲町を代表する山で、標高は999.3m。登山は鉛川の登山口(八雲温泉おぼこ荘上の旧鉱山事務所跡地)から頂上まで約4.05kmあり、銀雄の滝(銀山沢にある一条に落ちる滝)、海見平(日本海と太平洋が一望できる)、6月下旬から7月上旬まで山の壁下に雪が残る、など沢筋に沿って登る要所要所に見所がある。所要時間は登りが3.5時間、下りが2.5時間。中級クラス以上が対象の山。落石にご注意を
とのことである。
4:05に寝袋から出た。パッキングをし直して早めに朝食をとる。外に出てみると霧雲が山の上からどんよりとかかり、近くしか見えない。7人が今日は沈殿して、残り7人しか雄鉾岳に挑戦しないこととなった。
 玄関前に赤ポストが立つオボコ山の家は昔の郵便局舎を保存活用しているのがよく分る。室内の壁に吊るしてあった自転車は配達に使われていたものかもしれない。玄関には八雲ワンダーフォーゲルと八雲高校山岳部が建物の管理を行っていることを示すプレートなどが張ってある。1夜の利用を感謝した。窓の外にはクリンソウが咲いているが他に目立つ花は無かった。沢登りセットは大ザックに収納して車に積み込み、アタックザックを背負った。
 オボコ山の家の丸木橋手前を6:20にでて林道を僅かに歩いて雄鉾岳登山口へ引き返す。雄鉾岳登山口には周辺登山ルート説明大看板が立ち、八雲高校山岳部が開いた満願展望台の登山口道標も立っている。マンガン鉱山だったのかな
 06:25に両コース分岐を雄鉾岳の方向へ進む。広葉樹高木林の斜面についた巻き道は昨夜の雨や今朝の霧に濡れたヤチブキやオオイタドリが被さって雨具が濡れる。蒸し暑いので雨具の中も汗が流れていた。
 要所に目印が着き、ロープも張ってある広葉樹林の中を抜けて銀山沢に出た。やはり鈴木金物店で聞いたようにこのところの好天続きで沢の水量が少ない。
 頂いた遡行図と5万分の1地形図に書き込まれたルートを参考にし、渡渉箇所の両岸にあるテープや岩の上にある積み石を目印に沢の左右を選んで登っていった。上流は霧が懸かって尾根筋から現在位置を判断することができない。また、頂いた遡行図にある沢、滝など水量が少ないためか明確ではない。仕方なく目印頼りに登ることになった。沢に大きな落差があるのだろうか。高巻きした岩の背後でヤマツツジらしい花を2ヶ所で見た。下って河原を歩くと、目印になるような大岩が立っていた。
 沢が二又に分かれていたが迷うことなく目印に従って右沢に進んだ。もしかしかしたら高巻きしたところがウポポウシの滝かも知れないと地形図を見て思う。頂いた地形図は北が下向きになっているのでどうも使いづらい。登山口から雄鉾岳の方向は凡そ南であると独り言を行ってみて脳髄の中を整理した。
 沢が狭まり、左右の斜面には崩落した泥壁が続くようになった。沢の中の石には藻苔がつき、泥を纏って滑り易い。「石渡をして靴を濡らさないように無理をすると危ない」ので水中の礫を踏んだりして進んだ。
 07:39にオボコ沢出合い到着した。目印が着いている又の間が崩落しているので回りこんで登り、左へ沢の岸沿いに下り、そのまま踏み跡に従い左岸急斜面(右)をブナを抱きながら登った。突然踏み跡が消え迷い道を上ったことが判った。最後尾に沢を偵察するように声をかけ、返事を待つ。直ぐに「テープ発見」と返事が返ってきた。下りに確認したが、そのままオオイタドリに覆われた沢に突入したほうがよかったのだ。
 この細い沢は斜度が大きいためか、茶色の石が積み重なった段差が続く。両岸には細木や笹、ヤチブキやオオイタドリなどが生えて、沢の上流方向しか見えなかった。
 次第に水が少なくなり、伏流の場所も出てきたが突然、水量が増えで沢が左右に分かれた。目印は右に沢にあるが踏み跡は左の沢にもある。水場だと直感してヤチブキの中に入ったところ、地面に落ちた水場の看板を見つけた。ここが銀湧水なんだろう。ペットボトルを出して一口飲んでみた。ヤチブキの薮から出て、明るい場所で休憩する。時計を見ると08:35分、標準時間で登ってきたとの声がかかったがどうなんだろう。梢の間から雄鉾岳と青空がはじめて出てきた。教えてもらったように噴火湾から流れ込んだ雲海は雄鉾岳で切れている。
 笹交じりの薮で囲まれるようになった平坦な沢道が終わると急峻なのぼりになった。残雪が融けて日にちが経っていないようで岩や足元にオオサクラソウが花開いていた。
 角を曲がると茶色に芥を被った残雪が崖の下まで急峻な斜面を作っている。雪面は小さいながらスプーンカット状態で軽クランポンなしで登られそうだ。ベルクシュルンドに注意しながら斜度が低いところを選んで進む。オオサクラソウが群落になって岩などに張り付いている。残雪から離れたところに生えているものは既に結実していた。残雪を二段に分けている岩を足場に立ち休みをして残りの残雪斜面を登りきった。
 崖下には巻き道がオオイタドリなどの背丈が高い草の中を崖の膨らみに合わせて北西に延びている。崖の上にはブナなどの高木が立って葉や枝を東風に揺すられていた。崖の反対側の谷向こうには近くの山々が雲に浮かんだり、隠されたりしながら見えていた。満願展望台、鉛川岳、元小屋沢山はどれなのだろうか。雲が切れて再び頭上は青空、薄日が射してきた。
 巻き道のどん詰まりに崖から下りて来た溝(ガリーというべきかルンゼというべきか)があった。ここが海見平への取り付きだ。豪雪のせいか、登り口の目印看板は倒れて曲がっていた。海見平まで標高差100mの斜度が大きい溝を登る。要所にはしっかりした固定ロープが張ってある。所々、ロープが埋まっていたり、倒木に押さえられて使いにくいところもあるが注意して登れば問題はない。最後尾に回ってロープの順番を待ちながら登る。ロープの上端で尾根等高線920mに出ると棒が立っていた。水場や溝の登り口と同じく看板が落ちたて支柱が残ったのかと思う
 登りついた尾根はなんと平坦で、風が波打たせて渡る広い笹の平原になっていた。地形図で確認すると雄鉾岳から海見平を通って元小屋沢山の裾まで落差のない広い尾根が続いていることが確認できた。雄鉾岳は錫杖岳のような鋭鋒と勝手に思い込んでいたのが恥ずかしい。日本海と太平洋の双方が見えるという海見平だが、雲海を運んできた東風のため太平洋は隠され、日本海にも濃い靄がかかってハッキリしない。諦めて笹薮の中の道を進むと雄鉾山の山頂にであった。到着は10:17、休憩を入れて3時間52分かかっていた。70歳超のメンバーに合わせるのだから当然か。雨が降らなくて良かった。
 強風のポケットになっていた雄鉾岳の頂上には一寸した広場があり、三角点と山名標のためだったと思われる鉄ポールが立っていた。細木が邪魔をしているのと今朝からの雲海で展望はなかったが細木の間から西峰と割り岩、そのむこうに遊楽部岳がどっしりと座しているのが見えた。南の方にも雲海の上に頭を出している山々があったが初めてで名に疎い。遠くの双耳峰は渡島駒ケ岳かもしれない。昼食に八雲町のスーパーで買ったレーズンロールを頬張った。
 15分ほど頂上で過ごして雄鉾峰から下山を始めた。頂上から登山口までルートも見分けられるとしてトップから最後尾に位置を変えて、良く手入れされた頂上稜線の道を下る。道の傍らには立派なブナも立ち、草付にはエゾゼンテイカが開花していた。海見平からロープの順番待ちをルンゼを急降下した。それでも15分で溝から崖下の水平巻き道に到着できた。
 アップダウンがある崖下巻き道はオオイタドリ、ヨブスマソウなどの新緑の高い草で覆われて薮になっていることを再確認しつつ草薮から出た。谷側の大きな石の下が僅かに雨宿りができるようになっており「これが岩室か」と声が掛かった。崖の下は残雪が融けてようやく芽吹き、ヨブスマソウの新芽が頭を出し、ニリンソウが白い花を幾つもつけていた。
 巻き道から急傾斜の残雪斜面の上に着いて残雪を見下ろすと、最上部の雪の下は雪解け水が作った洞穴が通っていてルートを注意して選ばなくてはと警告していた。雪解けしたばかりの斜面に芽吹いたばかりのヤマウドが伸び、ニリンソウの花が回りを飾っていた。残雪の急斜面を下って、平坦な薮沢道を下ったところで小休止した。水場は近い。
 水場を横に見て、「これから濡れるな」と覚悟した。岩段差の多い薮沢をどんどん下って出合いに着いた。支沢を合わせて沢の幅が広がり、川床も河原になって目印の大岩まで下った。だれも転倒滑落せずここまで来たかとほっとした。すぐに二俣になり、さらに水量が増え、谷が広がった。沢に滝が現らわれ、左岸大巻きになる。登りでは背後になるので滝に気が着かなかったのだ。巻き道の上で岩にミツバで橙色のツツジが咲いていた。「まさかヤマツツジ?」と悩む。
 沢に下り、ようやく銀山沢から右岸の徒歩巻き道へ帰りついた。広葉樹林を抜けてKさんと最後に登山口広場に出た。下山は約2時間50分(帰着13:20-10:32)とまずまずであった。登山道を整備してくださった八雲WVと八雲高校山岳部の皆様に感謝しつつ、車に荷物を積み込んだ。
車で10分下って八雲温泉おぼこ荘で入浴(\450)と着替えをし、自慢の濃い牛乳(\100)を飲む。全員揃ったところで八雲温泉おぼこ荘を出発し、往路を鈴木金物店まで下って、SLが礼状を添えてオボコ山の家の鍵を郵便受けに返した。日曜日はお店が休みでシャッターが下りていた。
八雲町からは八雲ICに乗って落部ICまで高速道路を利用し、北斗市から福島町千軒にある(大千軒岳)登山者休憩所に向かった。もちろん300名山マニアのために翌日、大千軒岳に登るためである。
7月2日 (月)
霧雨の中、新道コースを往復して大千軒岳に登頂し、予備日の7月3日(火)は函館山と元町、赤レンガ倉庫街を散策して函館空港で13:00に解散した。
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6月30日(土)
7月1日 (日)