北海道 夕張山地奥芦別鋭峰群
 【期日】2017/05/08〜12

 【メンバー】CL(Qさん)、TI(合計2名)

 【コースタイム
《05/08》十八線温水池西の林道ゲート12:11→12:50二股で渡渉13:11→作業道終点650mは?→15:59コル1080m→17:15主稜線コル1196m(幕営)

《05/09》幕営地7:13→8:29前山→8:59小天狗北峰9:09→9:40前山9:47→9:56小天狗南峰近く 登頂断念10:03→10:12前山→10:36極楽平縦断11:08→11:30御茶々岳(おちゃちゃだけ)11:36→12:12主稜線コル1196m(幕営)

《05/10》主稜線コル1196m幕営地4:24→極楽平→5:31分岐→6:13松籟山(しょうらいさん)6:19→6:47分岐→8:28布部岳(ぬのべだけ)9:45→分岐→極楽平→12:17中天狗12:41→極楽平→15:12主稜線コル1196m(幕営)

《05/11》雨天で幕営地にとどまる

《05/12》主稜線コル1196m(幕営) 6:18→夕張中岳近く平坦地 時間切れ6:52→8:09主稜線コル1196m幕営地8:32→9:16コル1080m9:20→10:02槇柏山(しんぱくざん)10:05→10:31コル1080m10:58→林道終点?→12:27二股で渡渉12:59→13:49十八線温水池西の林道ゲート→14:07十八線温水池14:32→15:17山部ふれあいの家(泊)

【コメント】
1.夕張山地
・北海道中南部の上川〜空知〜胆振〜日高にまたがる南北方向の山地。北は空知川、南は沙流川の間を占め、東側は上川盆地、富良野盆地に、その東に日高山脈が平行する。 西側は丘陵性山地、さらに石狩平野に続く

・夕張山地は芦別川、シュウパロ川を境に東部と西部の山地に分かれる。
 東部山地は主峰の芦別岳(1726m)、夕張岳(1668m)など 1000m以上の壮年期の山々が連なる傾動地塊で富良野盆地に急傾斜で落ちる。
 西部山地は主峰の幾春別岳(1068m)を除いて700〜800mの丘陵性山地が大部分を占める。

・地質は白亜紀層や古第三紀層などからなり、西部山地の石狩層群は石炭を含み石狩炭田(懐かしい!)の中心であった。

・夕張山地の富良野芦別道立自然公園域には高山植物が生育しており、1996年(平成8年)に「夕張岳の高山植物群落及び蛇紋岩メランジュ帯」が国の天然記念物に指定された。(以上インターネット記事から抜粋)

2峰々
・夕張山地を構成する山群には、富良野西岳( 1,330.9m 1等三角点下富良野)、布部岳(1,338m)、中天狗( 1,316.8m 3等三角点 中天狗)、崕山(1,057m)、松籟山(1284m)、御茶々岳(1,331m)、槙柏山(1,184m)、芦別岳( 1,726.1m 2等三角点 礼振岳)、幾春別岳(1,068m 2等三角点 幾春別岳)、鉢盛山(1,453m)、吉凶岳(1,208m)、滝ノ沢岳 (姫岳)(1,353m)、夕張岳(1,667.7m 1等三角点 夕張岳)、屏風山(1,260.8m 3等三角点 屏風山)などがある(ウィキペディア)。
・その他、小天狗、シューパロ岳や、地形図には山名がないが地元で夕張中岳、夕張マッターホルン(1415m)と言われているような山々もある。

3富良野オートルート

・富良野オートルートとは富良野スキー場〜北の峰〜富良野西岳1330m〜布部岳1338m〜松籟山1284m〜御茶々岳1331m〜極楽平〜槙柏山1184m〜十八線川を結ぶスキーコースであるらしい。
・もともとオートルート(la haute route)は、アルプスのモンブランのシャモニからマッターホルンのツェルマットに至るトレッキングルートで、スキー走破するのが憧れになっているそうだ

4奥芦別山群か後芦別山群か

Qさんは奥芦別鋭峰群と教えてくださったがインターネットを見ると後芦別山群と記したものがあった。
奥か後かどちらでもよいが文字通りあまり知られていない地域にある山々なのだろう

5夕張山山地山行経験
・TIは2006年07月08日金山ルートから夕張岳に往復したことがある。
・北海道100名山をとっくに踏破しているQさんは夕張山地のめぼしい山々に詳しいが奥芦別鋭峰群は未踏であった

6今回のポイント(CL:Qさん)
ベースキャンプを設けて、軽装で山群を登頂する。また天気や残雪(岩・薮)状態などの状況に合わせて山を選び、登れない場合は撤退するという約束であった

7アクセスと燃料手配
予約など面倒なことはQさんにお任せ
《往路≫05/08
・志木05:37〜05:57池袋06:03〜06:32品川(京急線)06:41〜06:32羽田空港国内線〜JAL北ウィング 余裕をもってチェックイン・荷物預け〜07:10G21でQさんと落ち合う
・09:25旭川空港〜富良野へラベンダー号10:10〜11:18市場前〜Homac(ホーマック)ガスシリンダー購入プリムスハイカロリーはレギュラー2缶、ラージ1缶を(.プリムスの在庫はこれだけ)11:4 (富良野タクシー)〜12:11十八線川林道ゲート

《復路≫05/13 
・山部ふれあいの家太陽の家(富良野タクシーで)発9:50〜10:06新富良野プリンスホテル(ラベンダー号に)10:40〜12:02旭川空港13:10
8林道ゲートから主稜線コル1196mまで
・ゲートから十八線川左岸沿いの林道は広く、よく手入れされているので春を楽しみながら歩くことができる。

・林道が崩落している二股で右岸に渡る。崩落点近くとすこし下流の2か所に倒木が左岸から右岸に丸太橋になっていた。林道脇黄色PEテープを巻いた木が下流の倒木丸太橋の目印であるらしい。倒木の丸太渡りは軽装なら楽々である。重い大ザックを担いでいるときは細心の注意をして焦らないことだ。右岸に渡って川沿いに進めばすぐに再び林道(作業道)に登ることができる

・作業道が残雪の下に消えて、その上、谷幅が広がっている平坦な場所が次の障害だ。広い谷には左右に大沢、その間には錯綜した小沢や小尾根がある。高木が立つ小尾根には笹薮があって眼を遮る。目障りだ。左右の大沢には合流する谷があるので迷い込まないようにする必要がある。ところで小沢の上にかぶさる残雪を信用してはならない。度々、膝上まで踏み抜いた。足元からすこしでも水音が聞こえれば残雪の下に空洞がある。歩きやすそうな小沢より谷奥に通ずる小尾根をこまめに見つけて笹薮や急斜面があってもそれを歩むのが肝心だ。もっとも季節が進んで無雪になり作業道末端に進めるならば心配ないのかもしれない。もちろんQさんが実行しているGPSウェイポイントとのずれをチェックして次のポイントに進むことが最善だ

・谷が狭ばまれば傾斜もつき、進む方向に迷いも無くなり踏み抜きも減る。72歳のTIは斜面が急になると4歳年上のQさんにいつも遅れてしまうが・・・

・登りついた御茶々岳南東尾根と槇柏山北東尾根が結ぶコル1080mには薮に向かって赤テープ目印を巻いた木が立つ。コルから御茶々岳南東尾根にかけて笹薮が延びる高木林になっていた。尾根の東には細いながらも雪堤が繋がる。雪堤を登って笹薮が薄いところを選び西側斜面に抜けて残雪斜面を巻くのが良い。コルをそのまままっすぐ南西に谷に下ると登り返しがきつくなる。もっともTIはQさんを追いかければよかったのだが・・・

・御茶々岳南面と芦別岳の夫婦岩を左右に眺めながら残雪の谷を詰めると主稜線コル1196m下に出る。主稜線には雪庇が残っていた。御茶々岳に近寄ると雪庇が消えて幾分なだらかな斜面があった。

・主稜線コルは風の通り道で、8日は西風、11日は東風が抜けてフライが鳴りテントが抑えられた。コルから西にすこし下ればテント設営に適した平坦な場所があるとは12日にわかった。
9主稜線コル1196m〜小天狗北峰〜南峰登頂断念〜御茶々岳〜主稜線コル1196m
・御茶々岳西斜面を等高線に沿って巻く。肝を冷やす急斜面巻きが15分間程ある。Qさんは余裕をもってパスされたがTIはおずおず(滑落しても20〜50mだとは思うが・・)

・小天狗北峰の急斜面はいつものようにQさんが先行して登り下り、ピッケルと手、両足を雪壁に差し込んでクライムアップ&ダウン。指先が冷えて痛みを通り越して無感覚になったがどうにか・・・。薮が出ていれ楽々なのかもしれない。

・小天狗南峰は斜面を眺めて岩場を乗り越すために使える薮が残雪の下と見えた。薮なしでは滑落するかもしれないと(QさんとTIで)判断して登頂を諦めた。2人とも70歳を超え、無理をすることはない。

・引き返して御茶々岳を目指した。北から漫歩、西からの風がきつい。御茶々岳の最高点は1331標高点の東にある
10主稜線コル1196m〜松籟山〜布部岳1338m〜中天狗〜極楽平〜主稜線コル1196'
・昨日に2度も歩いたコルから極楽平への道をまたまた歩んで松籟山分岐についた。そそりたつように見える岩・草付き・薮斜面には踏み跡がある。その上には腐った雪の急な斜面があり、そのまた上にはハイマツ薮があった。松籟山頂上は好展望、これから行く布部岳が見える。下りは薮を掴み、草付きには用心して下った。松籟山登頂は見かけより楽々である。

布部岳へ。
・布部岳の急斜面を四足でクライムアップしてQさんが待つ頂上尾根に着いた。Qさんが登った跡を追随しただけだが.雪壁下りが心配になる。布部岳山頂からの展望は素晴らしい。下りのクライムダウンは細心・慎重。一息ついた場所にはスキーのシュプールが幾条も残っていた。富良野オートルートの証だ。スキーヤーも登頂したに違いない。

中天狗
・布部岳と同じく急斜面・雪壁があるのでピッケル・クランポンの前爪、そして空いた方の手もフルに使って慎重にクライムアップ&ダウンをした
・頂上尾根の寸前は岩に挟まれた細い雪溝を利用した。残雪・薮・岩の状況でコースを変える必要があるとはQさんの弁
12主稜線コル1196m→夕張中岳近く平坦地→主稜線コル1196m幕営地→c1080コル→槇柏山→c1080コル→林道終点→二股で渡渉→十八線温水池西の林道ゲート→十八線温水池→山部ふれあいの家
・天気が良かったら前日11日に夕張中岳に登るはずだった。主稜線コルから夕張中岳近く平坦地まで歩んだが、残雪を楽しむには最善のルートであった。

槇柏山
・槇柏山の頂上稜線の真ん中に地形図にない岩(小峰?)がある。これを稜線越にクリアするには薮を掴むか、ロープが必要と思われる。それを避けるには急斜面だが残雪を利用して岩の先の薮に登りつくのが良策である。どちらにしても残雪急斜面の下りが待っている

下山
・スキーのシュプールをトレースしながらまず狭い谷を下る。登りで苦労した広くて平坦な谷に入るとスキーのシュプールも分裂し、消失した。小尾根を選んで下ったものの左岸の大沢に近寄っので、GPSで位置を確認しつつ中寄りの小尾根に戻った。すこし下ると雪のない作業道に出くわした。が作業道最終点はもっと上にあるはずだ

・渡渉は慎重に
雪解けと11日の雨で増水、上流側の倒木活用をあきらめたが下流側の倒木を利用できた(記録を)

・山部自然公園太陽の里ふれあいの家は登山者の味方、比較的安価、地元の山部の皆様も宴会に使われていた。次回芦別岳に登るときにはぜひにも泊まりたい。同行者を募る

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《記録≫
《05/08》
 狐の嫁入り雨が降っている富良野市場バス停前のホーマックから富良野タクシーで一九線を回り込んで十八線温水池西の林道ゲートに着いた。びっくりしたことにゲートが開いていた。整備された林道はタクシー走行でも問題ないので進んでもらった。林道を塞ぐ倒木、ここまでと下車して重いザックを担いだ。林道の左右は笹にトドマツ林 で、雨が上がったものの頭上は雲で覆われていた。暗いトドマツ林を抜けて明るくなった林道の路傍には蕗のとうが林立、見上げた谷の上の雲に青い切れ目が出てきた。堰堤の上流に生えた柳は「今が芽吹き」と開花で春を知らせていた。歩きやすい林道を奥に進んだ。

 雲がすこし上がって目の前に雪山が出てきた。地形図にある林道分岐に着くと鶯が囀る対岸の林道は雪で覆われていた。しばらく歩くとこちらの林道にも残雪が出てきた。谷奥に雲がとどまり高い山はまだ姿を見せなかった。

 二股で林道は沢に削られて欠け落ちている。林道があった左岸から右岸に渡り再び左岸の林道に登らなくてはならない。渡渉点を見つけるのは登山者の判断だ。Qさんは倒木渡りに挑戦している。渡り切ったQさんの運足を真似をしつつ手足の位置を倒木の上にジワジワと進ませて、小さな中州を踏んで沢を越した。細い倒木の橋も小さな中州も実に頼りなく、沢音も耳に入らなかった。渡渉点から沢沿いに登り斜面の笹を掴んで林道に上った。

 林道に登るとひと安心、ウソか思われるフヨフヨとの囀りも耳にようやく入った。林道に交わる谷にエゾノリュウキンカの黄色がちらりと見えたがそのまま林道と思われる残雪の上を選んで登る。周りも残雪に覆われてどこが作業道かいよいよわからなくなってきた。

 すぐに谷が広がり、小尾根・小沢が錯綜した平坦な疎林に入った。小尾根上と斜面には笹薮が所により出ている。どこが登りにいいのか、ちょっと先を行くQさんを見ながら進む。Qさんのありがたい踏み跡をトレースしたのだがそれでもたびたび足元の雪が抜け、時に膝上まで沈む。体重差で10kgも重ければ当然とはいつも思うのだが・・・。足を抜くたび疲れが重なった。

 林道から見た山にかかっている雲の中に入ったようだ。霧雨となる。残雪斜面が幾分急になったので一休みしてクランポンを履いた。疎林残雪を登るにつれ斜面が急になり気温もさがり霧雨が霰に代わりぱらぱらと体に当たった。足元を見れば小動物の足跡に混じって霰が化粧した熊の足跡があった。

 御茶々岳南東尾根と槇柏山北東尾根が合わさるコル 1080mに登りついた。尾根は笹薮をまとう高木林になっている。雪をかぶった笹薮に立つ細い木に赤テープ2本が目印に巻いてあった。下の谷の東側には平坦地がある。目印は2本のエゾアカマツだ。赤テープがあるので「コルをそのまままっすぐ南西に谷に下れ」と誤解すると主稜線コル1196mへの登り返しがきつくなる。尾根の東には御茶々岳に向かって雪堤が繋がっていた。

 雪堤を登り尾根の笹薮が薄いところを選んで西側斜面に抜け、等高に残雪斜面を巻く。もっともTIはQさんの踏み跡と声を追いかければよかったのだが・・・。霰が小雪に替わった。雪雲が尾根越しに西から東に流れ、東の富良野盆地には青空が広がっていた。左右の御茶々岳南面の岩壁と芦別岳の夫婦岩に威圧されながら残雪の谷を詰めると主稜線コル1196m下に出る。主稜線には雪庇が残っていた。御茶々岳側雪庇にQさんがクライムアップした跡があったのでヨイショと登ったが、さらに右の御茶々岳側は幾分なだらかな斜面が見えた。

 雪庇があったように主稜線コルは風の通り道で雪がウインドクラストしていた。先着したQさんが唯一西風が当たらぬ笹薮際に平坦適地を見つけていた。西風が霧と小雪を運んでいる。御前岳のようにテント設営時に指が凍り動かぬような寒さではなかった。夜も小雪が降り風は枝を鳴らし続けた
*
《05/09》
 テントから空を見上げて快晴を、次に御茶々岳、夫婦岩から白い芦別岳山頂、見おろして槇柏山から富良野盆地の先に十勝連峰を展望した。コルを通る風はまだ薄霧を運んでいるが、射した朝日がダケカンバの枝に着いた霧氷を落とし、それを西風が運んでバラバラとテントや我々のからだに当てた。

 主稜線コル1196m を出て御茶々岳南尾根東の雪堤を少し登り疎林の笹薮分けてを西に移った。等高線を守りつつ御茶々岳西斜面を巻く。「平坦な谷底が見えるのに」と思いつつ斜面についたQさんの踏み跡を追う。頭上からは霧氷の剥片が降り、足元は新雪が深いところで5cmほど積もっていた。お化粧雪のせいでクランポンの利き具合がTI好みではない。ピッケルの刺さり具合も気になる。ダケカンバ疎林を通して小天狗の南峰と北峰が見えた。巻道が緩斜面が急斜面に変わる。15分ほど五体を活用し辛抱して歩み、平坦尾根に待つQさんとようやく合流できた。

 平坦な御茶々岳西尾根からは夕張中岳への稜線も見える。振り返ると芦別岳の上にはまだ雲がかかっていた。北に向かって極楽平へ向かう。青空と視界を分ける白い残雪に黒いエゾアカマツが立ち並ぶ平原がある。その北には布部岳、布部岳のには西富良野岳、さらに富良野盆地に遠い十勝連峰を見える。西には中天狗から小天狗に連なる稜線が走り、南を振り返れば御茶々岳、その右には芦別岳があった。

 小天狗の前山へ向かって極楽平の西尾根に曲がった。西尾根から見ると小天狗南峰と北峰とは前山を挟んでいるものの予想外に離れている。朝の強い日差しのせいで西尾根の雪も次第に柔らかくなり湿ってきた。 西尾根が南北に分かれる前山に登り着く。極楽平とは趣の変わった青空白銀黒い蝦夷赤松の世界であった。東の極楽平を振り返ると松籟山がちょこっと頭を出していた

 小休止した後、まず前山から小天狗北峰に向かった。コルまでは残雪世界を楽しむ下りであったがコルからは北峰の残雪急斜面登りになった。いつものようにQさんが先行した。斜面がすぐに壁に変わる。Qさんのクライムアップした跡を使わせていただけるものの50mの雪壁をピッケルと手、両足を使って登ると指先も冷えて痛みが出る。雪壁の上はハイ松薮斜面でクランポンの爪が前進を妨げる。どうにか薮を抜けてQさんが休んでいる小天狗北峰の頂上に着いた。頂上を示すものは何もないがハイ松薮越に見る展望は素晴らしい。南西にある小天狗南峰、夕張中岳、南の芦別岳、北には中天狗、東の松籟山、それから北にから延びる布部岳への尾根、さらにその向こうは十勝連峰が盆地の向こうにあった。
 残雪の山々を見渡した後、北峰山頂から下った。ハイ松薮を抜けるとQさん先行の四つん這いクライムダウンが続く。 おお怖わ。股の間からQさんの姿を見ながらスローアンドステディと唱えてくだった。登りより時間がかかったせいか手袋が濡れ、冷えて指の感覚がなくなった。雪壁から急斜面へ、ついで平坦地に降りついて安堵の一息をついた

 前山に帰り、頂上から南峰につながる南西尾根を見る。南から西の斜面に生えた木々が南西尾根の下り取り付きを隠しているのでまずは2人で南尾根を確認し南西尾根降り口を探して下った。南西尾根は幅広の残雪稜線から細い岩稜となる。岩尾根は北を巻き再び残雪の尾根に出て巌門を通った。コル手前で小天狗南峰北東斜面を見てルートを探し相談する。岩壁と雪壁が混じりロープを使わなくては登頂・下山は危険と判断した。「薮が頂上まで続いていれば」とはQさんの託宣である。せめて写真でもと小天狗南峰を背景にお互いを撮影して往路を前山に帰り、尾根を辿って極楽平へ登り返した

 美しい極楽平を横断して御茶々岳北尾根に着いた。平坦な残雪尾根を御茶々岳へ登る。東の谷の間からは十勝連峰から左に大雪山系を望むことができた。御茶々岳の平坦な山頂部へ上ると吹き抜ける風が残雪表面の薄氷を割ってカラカラと音を立てながら空中に飛ばしていた。小木ダケカンバの疎林を抜けて御茶々岳の東端にある最高点へ登りつく。北東に松籟山、布部岳、西富良野岳を、南に芦別岳を望む絶好のポイントである。御茶々岳とは面白い名前だ。山容からとは思えないが・・・

 強風に追われて御茶々岳を下る。主稜線コル1196mに向かって南尾根を直接下れば距離的には近い。しかし「主稜線コル1196mから見上げた南尾根には岩壁が見えた」との記憶があった。結局、安全な北尾根を下って西斜面を巻くコースを選ぶ。残雪が柔らかくなり足が沈むがクランポン歩行には支障がない。御茶々岳西急斜面も歩きやすくなり正午過ぎには主稜線コル1196m のテントに帰着できた。小天狗南峰未頂は残念であったが無事に2峰も登られたことを祝ってまず紅茶パーティとなった
*       
《05/10》
 空が白み始めると、笹薮でウグイス、ダケカンバ林でコマドリや山鳩、何種類もの同定できない鳥の囀りが周りから聞こえてきた。昨日と同じく、幕営地から御茶々岳南尾根を少し登って西斜面を巻いて平坦尾根に着いた。 比べて雪が柔らかい。今朝は右(東)に谷を見つつ極楽平を縦断した。極楽平北端から今朝も富良野盆地の向こうには十勝〜大雪が見える。もちろん、目の前の三角形の松籟山と西富良野岳、左端の布部岳も目に入る。平坦な尾根が東西に分かれまず東尾根に進んで松籟山へ向かった。

 尾根を南北に分かつ峰(これも無名)から南東の松籟山に向かって下った。コルの雪堤にザックを置いて空身で登る。最初は雪堤から南西の薮に入る。と、踏み跡があった。見上げた斜面の草付きにも数条ついている。灌木や岩を掴んで登るとその上は急な雪面となった。腐れ雪斜面の後はハイマツ薮に代わる。ハイマツ薮の中に小さな雪田があるが頂上につながるかわからない。先行するQさんの声を頼りにハイマツを漕いだ。
 松籟山しょうらいさん(1284) の山頂も低いハイマツで覆われているが展望はよい。芦別岳〜夕張中岳、布部岳〜西富良野岳を望むことができた。雪田を活用し、薮を掴み、その下の雪斜面にはピッケルを立て、草付きや岩にクランポンの爪を掛けて下ってデポ地点に帰ることができた。

 尾根分岐に登り返して北尾根に入り東斜面を巻いて布部岳へ向かってまず下った。コルから1221m峰へ上り返す。尾根の東は富良野盆地に急激に落ち込む谷になっている。今朝も十勝山地を見通せた。噴煙さえ認めることができる。コルに下って登り返した尾根北末端からわずかに下ると尾根に立つ3つの岩が門になっていた。西を振り返ると谷を挟んで中天狗が聳えている。北西にある峰を見ると山腹を巻く2段の岩崖がある。Qさんから「布部岳に着いた」との声がかかった。「もっと先にある峰が布部岳と思っていた。こんなに早く着くとは地図読み間違いだ。標高差があまりない歩きやすい残雪のアップダウンに騙された」と内心、反省した。1168m峰の麓は樹林帯になりそれを抜けるまで布部岳が隠れてしまう。沢の左岸から右岸に移って布部岳の緩斜面に出た。スキーのシュプールがある。
 20分も休憩して斜面に取りついた。すぐに急傾斜になる。その上の山腹にはあの2段の岩崖が巻いている。先を進むQさんは残雪の急斜面を選んで登って行く。雪壁もどうにかトレースして頂上尾根に上がることができた。 2分ほど北に歩んでQさんが待つ布部岳 の最高点に到着して言われるまま南北を展望した。
 登ってきた跡をたどって下山する。雪壁をクライムダウンし、急斜面を慎重に巻降りて一休みした。緩斜面から1168m峰へスキー跡が続いていた。よく見ると「ここにもある」と切れることがない。富良野オートルートを歩んでいると実感できた。1221m峰、松籟山分岐を経て極楽平の北端に帰り着いた

 まだ午前中である。極楽平北端から北西に中天狗岳へ延びる尾根をできるだけ偵察することになった。Qさんの調査では、このルートは細尾根の薮が濃くコルまで時間がかかるとのことであった。ところが今日は、細尾根でも雪堤の切れはわずかで思いのほか早くコルについてしまった。
 小休止後、急斜面に取りついた。最初の雪壁をクリアし、3筋もの小さな雪崩跡がある急斜面をダケカンバを目印に北に巻き、再び雪壁を登る。見上げるとQさんの登った跡は岩に挟まれた狭い残雪チャネルに続いていた。残雪も薄くなり左右は今にも崩れそうで、肝を冷やす。どうにか草付き岩場に移って頂上尾根に立つことができた。南を見るとコルを挟んで雪をかぶった峰がある。麓からはこちらの方が高く見えた。2分ほど北に歩いて中天狗山頂1316.8mで休んでいるQさんにようやく追いつくことができた。
 Qさんに教えられて雪解けの踏み跡に中天狗三角点を見つけることができた。雪が消えた草地にはフキノトウがいくつも顔をだし・エゾエンゴサクが枯草の中にちらほらと青い花を覗かせていた。踏み跡を西に辿る夏道が急傾斜の薮を通って頂上に登ってきていた。北西の山の山腹には林道や作業道が刻み込まれていたが夏道も楽な登りではなさそうだ。
 朝の快晴は薄曇りに変わり、高空には巻層雲、山々の頂きには里から上がってきた積雲がかかり始めて下り坂の天気であることを示していた。曇り空ながら展望は360度、中天狗から南西を見ると芦別岳右手の尾根奥にに鋭峰が頭を出していた。Qさんは「あれがシューパロ岳、それが夕張マッターホルン(1415m)」と教えてくださった。

 中天狗山頂を堪能して下山にかかる。雪チャネルの上から中天狗の山腹を見下ろす。ここもおおこわ。雪壁を四つん這いクライムダウン、雪崩の筋があった急斜面を巻き、またまた雪壁を四つん這いクライムダウンして緩斜面に下りついた。コルで休憩して極楽平北西尾根を登り返す。薮で獣臭かったのは熊の居場所を通ったのかもしれない。帰りは極楽平の西を巻いた。案の定、熊様の足跡と出くわす。通いなれてしまった極楽平から御茶々岳西斜面を巻いて主稜線コル1196m のテントに帰着した。見れば好天のせいで周りの残雪が融けてテントは残雪の台の上に乗っていた
*
《05/11》
 夜半には月が出たのに夜明け前に東からの雨風がテントを打った。NHK第1放送札幌を正時刻前毎に聞くと、ぐづついた天気が続くという。 気圧も820hpまで下がって一定になり、雨がテントをたたき、東風がフライをあおる。テント本体に走る雨筋を数えて時間を過ごした。07日16:00発表の10日間天気予報では晴時々曇、降水確率 20%のはずであった。裏切られて予定の夕張中岳に出かけられない。昼過ぎには強い雨が降ってきた。諦めて沈殿となる
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《05/12》
 空がが白む4:00まで富良野盆地から吹く東風にのった雨がテントを叩いていた。静かになったと思って外をのぞくと雨が上がり、盆地を雲海が覆い、夫婦岩がモルゲンロートに染まっていた。テントの外に出て御茶々岳から登る朝日をを見る。南西の夕張中岳も木立ちの間にオレンジの肌を光らせていた。東の雲海のに覆われた富良野盆地の上空は快晴である。ウグイス、コマドリが周りでにぎやかに囀り始めた。振り返ると雨による融雪でさらに高い残雪の台にテントが乗っていた。銀マットの断熱効果を実感する

 テントを撤収してクランポンを装着し、アタックザックを背負い、緩やかなダケカンバ斜面を下って夕張中岳見物に出かけた。クランポンの爪がよく利く。昨日の好天のせいか雪が薄くなり笹薮が目立つ。急斜面にかかったらいつものようにQさんはすたすた、TIは細心・慎重で離れてしまう。昨日はどこにいたのか、周り中から小鳥がさえずっていた。
 斜面から平坦地に下る。等高線に合わせて境界尾根(主稜線)の北西側を巻く。熊が皮はぎした枯れ木を過ぎるとスキーのシュプールが目に入った。これ幸いと今朝もお世話になる。美しいシュカブラ斜面を通り過ぎて1293m峰の麓の平坦地で休んだ。木立の向こうに夕張中岳がある。左(南)には夕張中岳に続く尾根が続く。夕張中岳に最も近いコルまで行けたらと目論んだが時間切れで今朝の散歩はここまでだ。夕張中岳を背景に記念写真を撮影して帰路に着いた。樹間に中天狗から崕山(きりぎしやま)に続く尾根を左に見ながら御茶々岳へ向かって帰る。スキーのシュプールも芦別岳の方から御茶々岳へ延びていた。

 幕営地に帰りパッキングし直して槇柏山へ下る。主稜線の雪庇は残っていたが残雪が軟化しているのでその下を通らずに御茶々岳に近寄って幾分なだらかな斜面を選び下った。御茶々岳の南東尾根を越す際には、TIの記憶違いでコル近くまで下って密な笹薮に入ってしまった。Qさんが言ったように巻道から南東尾根を少し登って疎な笹薮を抜けて尾根東側の雪堤を活用すべきだった。ともかく雪が消えて見間違えた薮を抜け、少し下って赤テープのコル 1080mにザックをデポした。

 槇柏山の頂上稜線の真ん中に岩(小峰)が立ち、西尾根を詰めて頂上稜線を西から東へ進むのは難しそうに見えた。どこを登るかはいつものようにQさんに決めてもらう。雪壁をにらむQさんが選んだのは残雪急斜面トラバース登りであった。するする登るQさんの後をTIは慎重に一歩一歩追いかけた。岩峰の東を目指して雪壁を登り尾根に着く。尾根は薮と小さな雪田が混じっている。薮を抜けて雪尾根に立ち富良野盆地を見ると雲海、芦別岳側を見ると夫婦岩に主峰、展望ならここで十分であった。次の尾根薮を抜けるとQさんが待つ最高点だった。申し分のない展望だ。夫婦岩、槇柏山から布部岳そして御茶々岳も周り見る。楽しんだ後、再び薮を漕いで雪壁の上に出た。雪壁を巻き下る途中で岩(小峰)をチェックしてみた。短いロープでもあればルートになる感じだ。岩(小峰)の下からはコルに向かって雪にピッケルをさして確保しながら下った。

 コルで行動食を取りながら少し休んで再び下った。コル下蝦夷赤松の周りはテントを幾張も張れる幕営適地だ。そこから何条ものスキーのシュプールが谷を下っている。8日にはなかったシュプールを追いながら広くて平坦な谷まで下った。4日前には見なかった笹薮がそこらじゅうに出ている。小尾根にスキーのシュプール探しながら下るが笹や倒木、小沢の上の軟弱な残雪を何度も踏み抜いてしまう。どうにか軟弱な残雪を抜けて雪解けした平坦な場所に出た。前後を見れば作業道だ。往路では雪の下で見分けがつかなかったので通り過ぎてしまったのだ。道脇でクランポンを脱いで寛いだ。

 作業道には笹薮となった場所や沢水が流れて靴を濡らすところができていた。登る途中、作業道の西側の小沢にちらりと見えたエゾノリュウキンカの黄色い群落に再会した。撮影して作業道から渡渉点へ下る。

 雪解けと降雨で沢が増水して倒木に乗るための小さな中州が流れに沈んでいた。2度も流木を抱えてきて中州の代わりに倒木に渡る橋を追加しようとしたが安定した支点が取れなかった。諦めて下流に下って赤テープ目印がある倒木にたどり着いた。まず空身で渡ってQさんの丸太渡りを見る。それを参考に重いザックを担いで手足を使い、肝をひやしながら沢を越して林道に立った。林道にはこの渡渉点の目印がある。

 少し休んで息を整え、動悸を静めて再出発した。林道の雪も林道分岐の対岸の雪もすでに融けて黒い道が出ていた。4日の違いで柳の新芽が薄緑に燃えたち、ふきのとうは伸びきっている。8日にはいなかった孔雀蝶が何頭も林道の上を舞う。下るにつれニリンソウ、ヒトリシズカ、シロバナエンレイソウ、エゾノエンゴサク、エゾノタチツボスミレの花が数を増しエゾシロチョウ、タテハとシジミチョウ(種名は?)が孔雀蝶と花春を祝っていた。
 今日の林道には理由はわからぬが臨時の横断通行止め(?)が3か所も設けられていた。保安林の大看板谷の奥を振り返ると降りてきた山々は雲と鬼ごっこをしている。林道を塞いでいた倒木は処理され脇の笹薮の中に捨てられていた。ゲートに近づくと今日はしっかりと閉まっているのが見える。施錠されたゲートには「入林希望者は連絡」とのプレートがあり、傍には「十八線沢林道」と書いた標識があった。

 ゲートを出ると明るい里になる。エゾノヤマザクラの花の先には十八線温水池があった。開きっぱなしのエゾシカ侵入防止ネットを通って温水池に着いた。春風に波を立てる温水池の堤に座って時間調整休憩をとる。山麓は盛春、芝生に土筆が林立していた。記念碑から十八線沢の奥を振り返ると峰々はもう雲に隠れている。残雪で濡れた足を乾かすために登山靴を脱いで驚いた。左の靴底後ろが少し剥離しているではないか。ここまで辛抱してくれたことに感謝する。ソックス絞って履き直して再出発した。エゾシカカウンター(?)の前を通って温水池を見つめる。温水池は多段で流出先は暗渠になっていた。
 舗装道路に出て右折する。前衛の山から離れたのでその上に芦別岳が姿を見せた。夫婦岩から槇柏山、御茶々岳も見える。道路の左右には富良野メロンの温室が連なっていた。富良野メロン栽培のベテランに出会い、 山部ふれあいの家の場所を尋ねた。ついでのいろいろ話が弾み、彼は「山岳部出身で登山ギア店の元重役、定年退職した友人が自宅に泊まり込みで登山、アメマス釣りなどを教えたが彼が帰宅して数日で訃報を受け取った」などと話してくださった。彼の温室の脇溝にニリンソウ大群落がある.。別れて舗装道路を進むと農業法人フラノプレゼンテの変わった建物や小花チューリップの花壇のある家などを認めた(こんな表現は不遜かな?)。それらを過ぎて山部自然公園太陽の里の看板をみて右折する。

 工事のトラックなどとすれ違いながらどうにか山部自然公園太陽の里ふれあいの家に到着することができた。 ふれあいの家は受付・食堂棟と宿泊棟に分かれている。部屋割された宿泊棟和室201号の窓から芦別岳が見える。濡れものをそこらじゅうに広げさせてもらい、夕食の定刻(17:30)に食堂(レストラン?)に出向いた。我々の夕食はまず推奨の石焼ジンギスカン定食、それにカルビを追加して5日間の動物タンパク質を補った。食堂には山部の職場仲間、家族連れが続々と入ってきて宴会や家族パーティを始めていた。地元にも愛される施設に違いない。食堂の壁には芦別岳案内のコピーが貼ってある。それを読んで、ここなら自動車が運転できないTIでも芦別岳に登るベースに使えると見た。
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《05/13》
 定刻の7:30に朝食をとり富良野タクシーで太陽の家を9:50にでた。後はコースタイムの通りである。が前線と低気圧通過のせいで羽田空港到着前は大雨が窓を叩いて流れていた。春は全国が同じ天気であることはない
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