| 【山行記録】 2月13日 |
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第5日: エレナ(4430m) - マルゲリータ(5109m) - エレナ(4430m) 04:10に起きてヘッドランプ、耳覆い付き帽子、スノースパッツ、雨具上下を着て重登山靴を履いた。4:38にはロバーツさんがポリッジ(オートミール)を持ってきてくれた。室温は2℃と意外に暖かい。MYさんは餅、HTさんは即席ラーメンで出発前の軽食を済ませる。 登頂できると判断してガイド2人が迎えに来たのでバックパックを背負い、ピッケルを持ってハットの外に出た。霧で曇っているが朧月が稜線の上にあった。ジョセファさんを先頭にMYさん、HTさん、TI、アロージャスさんの順番でヘッドランプの灯りを頼りに登る。水場を越えたあたりで山の端にあった朧月は雲に隠れてしまう。薄氷と雪が着いた氷河と水が削った一枚の岩場を滑落しないように重登山靴で慎重に登る。すこし登ったあたりで氷河が深く削った沢から右手へ岩の上へ岩を抱いて登り、「帰りは下りだから怖いな」と思いながら四つん這いでトラバースした。全体に氷河が削った一枚岩でガバ掴みができるので登るのには難しく無いが岩の上は場所により軟雪、ペルグラ、水と乾いた所がないうえ、側面にはイワタケなどが厚く張り付いて触るとペロリと剥げたりするので気が抜けない。傾斜も急だが遅足のMYさんとHTさんが前にいるので楽に息を継げる。下を見ると雲の隙間でランプが動き出した。ハットのドイツ系登山者も起きたのだろう。 小さなケルンや細い棒の目印を頼りに、平らな岩の上を歩み、 また沢を通るという組み合わせで1時間45分(パンフでは標準1時間)掛ってエレナ氷河の末端を見下ろす岩場まで登ることができた。 霧が立ち込めているがもうヘッドランプを消しても良い明るさになっていた。岩場の上でハーネスを穿いて重登山靴にクランポンを装着し、ついでジョセファさんを先頭にMYさん、アロージャスさん、HTさん、TIの順番にハーネスをガイド持参の使い込んだ一本の13ミリロープに等間隔に繋いだ。ガイド二人のロープワークは素晴らしい。アロージャスさんが全員の装備を再確認した後で順番に岩場を下ってまず氷河先端の雪壁を登る歩行が始まった。 視界はザイル一本分(40m)もない。雪壁を越すとエレナ氷河は比較的緩やかで、雪も柔らかくアイゼンを蹴り込むのも楽だ。目を凝らすと霧・小雪の中の雪上に目印の棒が立っているのが見えた。40分歩いて小休止した後一層濃くなった雪の中、氷河を再び登る。時々、ガイド2人が集まって目印を確認していた。そうこうするうちにドイツ系グループがお揃いの真新しい細引きで2人1組づつに繋がって脇を追い越し、トレースを残して登って行ってしまった。トレースを辿って登るにつれ、雪雲を通してエレナ氷河の左右に黒い壁が見えるようになった。ジョセファさんは右の露岩部に入ったらしい。ロープ前のHTさんを追ってクランポンをガチガチ鳴らして岩場をアップダウンし、次の東スタンレー氷河(アトラストレックのホームページ記載のスタンレー山塊概念図)氷河に乗り越した。雪雲が谷底から登ってきてホワイトアウトに近いがガイドは氷河を登り、上り詰めて平尾根に着いた。 歩いていると「狭い稜線ではロープを丸めずに一杯に展ばせ、広い尾根ではロープを丸めて持っても良い」とアロージャスさんは注意する。尾根の上にあると言う平坦なスタンレー氷原はどちらの方向にも1㎞はあるという。氷原の氷は極めて硬いと聞いてきたが残雪期の腐れ雪のように柔らかくクランポンの歯の間に団子ができてしまう。先頭のジョセファさんの影が薄くなる位の雪雲だがガイド二人はちらちら前後左右を見ながら前進した。雪雲がスタンレー氷原を覆ってホワイトアウト状態になったので止まって薄くなるのを待つ。MYさんに「こんな様子でガイドはよく歩けるものだね」と言うと、「勘で歩いているんじゃないの」という。進み始めて右を見ると目印の棒が立っていた。コルを越えるがほとんど登りはない。氷原の突き当りに露岩部(たぶんアレクサンドラ東南稜の端と思う)があった。 露岩稜線を登るかと思ったが予想外に沢(ガリーというのかな)に下り、露岩を巻いて登り返し気味に越す。先ほどの露岩部と同じくクランポンをつけたままのアップダウンなので注意が必要だ。手足が短いHTさんは岩の上り下りに苦労していたが要所には短い梯子や固定ロープがあって落ち着いて行動すれば問題はない。乗り越して入った急傾斜の氷河の名をアロージャスさんに聞くと「マルゲリータ氷河」と教えてくれた。随分と下った気がするので滅入ってしまう。クランポンとピッケルに頼って、クレバスに注意しながら先行したドイツ系グループのトレースを辿った。左右の岩稜が近く見えるようになり、次いで左の岩稜が消えて氷河の幅も次第に狭く変わり、暫くして見上げると雪壁のようになったマルガレータ氷河の上に垂直な黒いスラブが見えた。あれがコース最大の山場といわれる頂上直下の岩場だろう。 スラブの下に到着して見ると、先行したドイツ系グループの最後の2人が梯子と固定ロープがぶら下がる垂直岩面の上下で叫びあっている。アロージャスさんの「順番に」という指示に従って、ピッケルで各自ビレーしてドイツ系ウガンダ在住の女性が登りきるのを待った。まずジョセファさんがお手本に鉄梯子、固定ロープの順に岩面を登って確保を取り、小さなでっぱりに登ってビレーしてロープを垂らした。MYさん、HTさんが登った後、ピッケルを梯子の左の雪に突き立てて残し、ハーネスにロープを繋いで岩に挑戦した。クランポンがあるので足の進め方に迷ったが固定ロープを持って腕力で体を引っ張り揚げてどうにかでっぱりに着いた。ガイドは正統に、緊急時に備えてロープの緩みを手繰るだけで、MYさんが期待した釣瓶のように引き上げるロープワークはしなかった。空気が薄いせいか息が切れて暫く激しい呼吸を続けざるを得なかった。これがマルガレータで最大の難関というが冬に八ヶ岳の岩場を登った人にとってはチョロイものだと思う。 でっぱりから先は右へ固定ロープを頼りに岩場についた狭い棚を巻き気味に進む。棚が広くなった場所がマルガレータの頂上尾根の肩で先行したドイツ系グループ全員が我々を待っていた。「今度はお前達の番だ」、「おめでとう」と言い交わして交代する。残りは海老の尻尾がベットリ着いた岩尾根を僅かに登るだけだった。11:34に到着した頂上には頂上標以外何もない。雪雲が流れてきてホワイトアウトになったりで展望もない。年に数回しか雲が取れないというから期待していなかったがやはり残念だ。順番に頂上標と一緒に記念写真を撮って11:55に早々に下ることにした。皮肉なことに頂上を下って頂上尾根の肩に着いた頃から雪雲が切れ始める。固定ロープを持ってバランスを取り、でっぱりに帰ってきた。途中、古い固定ロープの切れ端が少なくとも2箇所ぶら下がっていた。金属梯子以外の所からも登れるのかもしれない。ガイドは固定メタルリングを使って懸垂下降の準備を始めた。順番に日本から持参のエイト環やATCを使って垂直岩面を下降する。最後のガイドが下ってくるのを待つ短い間、風に雪雲が払われてマルガレータが姿を現した。マルガレータの姿を撮って、氷河のほうを振り返ると足の下から急な雪壁が伸びていた。 アロージャスさんが「下りはアロージャスが最後」と言う(至極もっとも)のでTIはハーネスを後から2番目の結び目に繋いだ。 雪雲がそこだけ薄くなったマルガレータ氷河を下る。雲が切れて下が見えるので反って怖い。暫くは急斜面の下りだが徐々に傾斜が緩くなる。それに引き換えてクレバスがそこここに出てきた。大股で越したり、跳んで渡ったりで忙しい。中には誰かが目印にX印をつけたクレバスもあった。歩きに緩急が出るとロープが緩む。緩んだロープを踏みつけた前のHTさんより「弛ませないで歩いて」とお叱りの声が飛ぶ。TIの歩くスピードが彼女よりすこし大きいと結んだロープが彼女の左足前で弛んで踏んでしまうのだ。「手首でなく肘を腰に当ててロープを持てばいいのに」と思ったが、ロープを輪にして弛みを取って歩くことにした。振り返ると、後ろのアロージャスさんも同じことをしていた。 マルガレータ氷河とスタンレー氷原の間の岩稜も雪雲が遠ざかっているので先々の手足の掛け場が見通せ、楽々と通過できた。見通しの効く平坦なスタンレー氷原はホワイトアウトの登りと比べて不安が各段に少なかったし、スタンレー氷河へ下りもトレースがはっきり見え、雪氷面もクランポンが十分に効いたので鼻歌が出るくらいであった。スタンレー氷河とエレナ氷河との間の岩稜もエレナ氷河の雪壁も楽々下ることができた。エレナ氷河末端の岩場でロープからハーネスを解き、クランポンを外してバックパックに収納した。ガイドからハーネスは穿いたままとの指示が出て面食らう。 霧が登ってくるスラブの沢に下る。岩の上や沢の中には岩が積み重なったり、転がり込んだりし、岩の間には雪が残ってこんなところを登って来たのかと慎重に下る。平坦な岩場が続いてこれは楽に下れるかと思っていたら例のトラバースの左上に着いた。ジョセファさんがロープをバックパックから出し、岩の上の残置固定スリングにカラビナを付けてグリップビレーしてまず懸垂下降して下っていった。上ではアロージャスさんが回収したロープを再びグリップビレーしてHTさんに下るように指示した。HTさんが下り始める。傾斜が緩やかなので自分の体重を掛けてロープを繰り出すのに慣れてないHTさんは「ロープを出して」叫ぶだけで降下できない。さらにアロージャスさんが「レフト、レフト」と叫んで2本ある沢の左側に誘導しているのだがHTさんは「ジョセファさんがいる方(右側)に」と叫び返して動きが取れない。「あんた達も降りたら判る」と叫びながら、ようやく左側にコースを換えてジョセファさんのいる場所に下りついた。次はTI、アロージャスさんとMYさんの指示の通り、止まることなく降下してジョセファさんとHTさんの待つ沢の上でMYさんを待った。MYさんもアロージャスさんのサポートで降下してきた。MYさんが使ったHTさんのエイト環をアロージャスさんが投げてよこしたが取り損ねて重なった岩の下に落ち込んでしまった。「これは取れないな」と思ったら、アロージャスさんが降りてきて手を隙間に突っ込んでコチョコチョしたらすぐにエイト環が回収できた。やはり細かなトラブルでもまず現地の人に任せるべきだと改めて思った。 霧が立ち込めてきたがエレナ ハットの水場に続く、この沢は結構急傾斜のように見える。少し下ると沢が広がって一枚岩のテラスになり、水場からトイレ、梯子を登ってキッチンについた。既にドイツ系登山者も大多数のポーターもキタンダラに下ってエレナ ハットは静まり帰っていた。もう16:30になり(我々は5時間も下りに掛ったが標準的にはマルガレータ~エレナまで2-3時間だそうだ)、霧雲が周りを包んでいるので、「これからキタンダラ ハットに下るのか」と不安に思っていたら、キッチンから出てきたロバーツさんが「今日は登山者用ハットのキッチン側半分に、」さらに「明日の朝の食事は昨日の夕食時に話していたように我々が持参した日本食で」という。MYさんが提案したエレナ ハット2泊にコック、ガイドが合意していたのだった。 ハットの反対側から荷物を移し、ウレタンマットの上に寝具を広げ、重登山靴や濡れた雨具、スノースパッツを脱いでロバーツさんの出してくれたお茶で寛ぐことができた。夕食後、ひどい雷鳴と強風、屋根を叩く霰の音がして、「キタンダラ ハットに下っていたら、途中、暗くなる上にこの嵐に会ったはず」と思う。霰の音が去ると急激に気温が低下して室温も0℃になり、様子を見に来たアロージャスさんが「天候が交替した」と教えてくれた。23:30に外にでたら驚いたことに空には昨夜まで見たことの無かった満天の星が輝いていた。 |
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| Feb/12 |
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